
1月30日に開催された中央社会保険医療協議会(中医協)の総会では、懸案だった「診療所の再診料引き下げ」をめぐる議論が行われ、今改定での引き下げは見送ることで決着した。
診療所の再診料引き下げについては、今改定の緊急課題である「病院勤務医の負担軽減」のための財源を確保する方策の一つとして提案されていた。
これまでの議論で、(1)プラス0.42%の医科本体引き上げ分はすべて勤務医対策に投入する、(2)皮膚科や耳鼻科領域などの「簡単な処置」を初再診料に包括する、(3)検査判断料を引き下げる──などについては、既に合意している。だが、それでもなお、勤務医対策の財源不足が懸念されるため、診療所の再診料引き下げや再診料の外来管理加算の見直しが検討されていたが、診療側と支払側の意見が真っ向から対立。その判断が公益委員に一任されていた。
結局、外来管理加算に「患者1人につき5分以上の診察時間をかける」という算定要件を設けることで財源が確保できる見通しが立ち、再診料そのものの引き下げは見送られることになった。一方、病院と診療所の再診料の格差是正という観点から、200床未満の病院の再診料は引き上げられる見通しだ。
土田武史委員長は「国民の納得、医療現場の納得、診療報酬というツールを使って社会の要請に応えていく、という3つの観点から考えた」と説明。「診療所の再診料は今回手をつけないことになったが、初再診料のあり方そのものについて、次回の改定以降に引き続き議論していく」とした。これに対し、支払側は「今回の対応は、国民、勤務医への明快なメッセージにはなりにくいのではないか」とコメント。一方の診療側は「公益委員の判断を拒むことはないが、診療所の経営は大変であることを言っておきたい。また、病院勤務医がここまでの状況に至った経緯を中医協委員がしっかり考えておくべき」と述べた。
診療所の再診料は下がらないことになったが、外来管理加算の「5分以上の診察」や簡単な処置の初再診料への包括化だけでも、診療所にとっては、かなりのダメージになる。診療所が身を削って拠出することになる1500億円もの財源が、本当に病院勤務医の負担軽減に役立つように使われるのかどうか。これから、一つひとつを丁寧に検証していかなければならない。(和田 紀子=「診療報酬改定2008」特別取材班)