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6年前に逆戻り? 透析に時間のファクター復活か

2007/11/20

 11月14日の中央社会保険医療協議会中医協)の診療報酬基本問題小委員会では、人工透析についての議論が行われた。

 人工透析療法の診療報酬「J038 人工腎臓1」は最近、改定ごとに仕組みが大幅に変更されてきた。2002年の改定では、透析時間が長いほど診療報酬が高くなる仕組みが廃止されて透析時間とは関係のない一定の点数となり、2006年改定では、貧血治療のために多くの患者が使用するエリスロポエチン製剤の薬剤費が包括化された。また、1カ月に1度算定する「慢性維持透析患者外来医学管理料」は、この数年、改定ごとに数%~10%ずつ削減されている。透析患者の増加と相まって、診療報酬はどんどん削減されている状況だ。

 この日の議論では、透析時間に関するデータが話題に上った。週3回透析を行っている患者の1回当たりの透析時間を見ると、4時間未満の短時間で透析を行っている患者の割合が年々増加してきているというものだ。現在は、4時間未満が24%、4時間以上4.5時間未満が65%となっている。

 こうした短時間化の傾向には、社会の高齢化も関与している。透析の最適時間は、患者の体重や筋肉量などによって異なり、高齢者では3時間程度で十分な場合があるからだ。また患者側が、短時間での透析を要望するケースも多いとされる。だが一方で、短時間で済ませるために急速に透析を行うと、循環状態の変化が激しくなり、血圧低下や下肢筋肉の痙攣、頭痛、吐き気、嘔吐などが出現しやすくなる。そのために、時間をかけて透析せざるを得ない患者も少なからずいるのが現状だ。

 そこで厚労省は、「副作用のなどの理由で長時間かけて透析を行った場合には、時間に応じて診療報酬で評価してはどうか」と提案。「短時間で透析を行うと予後が良くないというデータがある。短い方が患者は喜ぶが、できれば4時間以上かけて透析を行った方がいい」と、4時間以上を標準としたい考えを示した。

 すると保険者の委員が「短時間の透析は予後が悪いから、長時間の透析を診療報酬で高く評価するとなると、透析時間を(むやみに)延ばす医師が出てくるのではないか」とコメント。診療側もこれに同調し「極端な例だが、4時間以上を評価するとなると、今まで3時間50分でやっていた患者を、4時間5分に延ばそうとする医療機関が出てくるかもしれない」と応じた。

 その後の議論の焦点は、「4時間」という基準の妥当性に絞られた。ある医師委員は「なぜ4時間で区切るのかを患者に説明するための資料がないと現場が困る」とコメント。結局、結論が出ず、次回以降、事務局が用意する資料を元に、再度検討することになった。

 透析治療に「時間」のファクターを取り入れるこということは、2002年改定以前の体系に逆戻りすることを意味する。だが、時間のファクターを取り入れて長時間の透析を評価するといっても、「長時間」に今より高い点数を設定するのではなく、「短時間」の点数を下げて相対的に「長時間」の評価を高める形になる公算が大きい。透析患者が増え続けているとはいえ、医療費総額を削減する流れの中で、1人当たりの透析医療費を増額することは困難だからだ。限られた枠組みの中で少しずつ形を変えながら、点数はどんどん下がっていく――。どうやら透析の診療報酬点数は、そんな「負のスパイラル」をたどっているように思えた。(富田 文=「診療報酬改定2008」特別取材班)

連載の紹介

どうなる?!診療報酬改定2008
後期高齢者医療の診療報酬はどうなるのか?産科や小児科や救急の評価は高まるのか?勤務医の負担軽減策は示されるのか?——注目を集める2008年度診療報酬改定に向けて、今秋から本格化する中医協の審議の模様を、独自取材によりリアルタイムでお届けします。
日経BP「診療報酬改定2008」特別取材班日経BP医療局の専門記者たちが総力を挙げて取材、情報分析します。

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