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あなたの病院にも「秘書」が来る!?
中医協、勤務医の負担軽減策の議論をようやく開始

2007/11/06

 11月2日に開催された中央社会保険医療協議会中医協)の診療報酬基本問題小委員会では、病院勤務医の過大な業務負担を軽減するための方策について議論が繰り広げられた。

 今回、事務局から案が示され議論が行われたのは、次の3項目である。

(1) 医師の事務作業を支援する医療事務の導入
(2) 診療所の開業時間の夜間への延長と診療所の初再診料の見直し
(3) 入院時医学管理加算の見直し

 (1)でいう「医療事務」とは、医師の事務作業を補佐する役割を担う事務職のこと。「医療秘書」「メディカルクラーク」などとも呼ばれている。具体的には、患者向け説明書類の作成、救急搬送記録作成、データ類の入力といった作業において、医師の作業をサポートする役割が想定されている。こうした「クラーク」を配置した病院を診療報酬上で評価する、というのがこの提案だ。

 この「クラーク」導入については、診療側、支払側ともに賛成の意向。質問や意見は出たものの、クラークの教育や資格はどうするか、院内での所属部署をどうするか、といった実運用に向けた具体的で前向きな内容が多かった印象だ。ただし、対象となる医療機関については、病院団体の委員からの「すべての病院が対象になるものと考えている」というコメントに対し、厚生労働省は「とりわけ急性期医療を担う病院の勤務医が疲弊しているので、そうした施設に絞って導入したい」と答えた。

「時間外診療の重点評価」は日医が反対
 (2)は、第2次、第3次救急医療機関の救急外来が、軽症者の時間外外来として利用されている現状を問題視したもの。そうした軽症者を診療所に任せることで、病院勤務医の負担を軽減しようというのが狙いだ。具体的な方策としては、夜間に診療を行う診療所を評価するために、診療所での時間外診療の点数を上乗せし、代わりに初・再診料を引き下げるという案が提示された。

 また(3)は、産科、小児科、精神科などで、十分な人員配置や設備を整えた病院を評価するという案。現状の「入院時医学管理加算(1日につき)60点」よりも高い点数を新設し、24時間の救急対応、地域の医療機関との連携に基づく外来の縮小、勤務医の負担軽減の対策──といった項目を満たした医療機関に、算定を認めるという構想だ。

 だが、(2)と(3)に関しては、日本医師会が強硬に反対した。(2)については、「初・再診料は医師の技術料。これを引き下げて時間外診療の評価に当てるというのは受け入れられない」とダメ出し。(3)の入院時管理加算については「看護師の7:1配置のときの混乱の再現になりかねない」と反論した。(3)に関しては、支払側も「外来患者が減って、その減収に見合うだけのプラスがあるのかどうか、といった観点からも検討していかなければならない」という見解を示した。

 土田武史委員長はこのような議論を踏まえ、「どこかで妥協しなければならない。(その妥協点を)具体化する方向で検討してほしい」とコメント。次回以降、改めて議論が行われることになった。

リアリティのあるクラーク制度の実現を
 以前、中医協にも提示されたデータだが、日本病院会の「勤務医に関する意識調査報告」によると、5年前と比較して勤務時間が増えた理由として、最も多かった回答は「患者数および診療時間が増えたほど医師が増えていない」だったという。

 つまり、現場の勤務医の感覚としては「とにかく医師が足りない」わけだが、それが簡単には解決できないことから、次善の策として急浮上したのが、上記(1)の「クラーク」である。既に独自で導入して実績を上げている病院も存在しており、数ある勤務医負担軽減策の中では、最も実効性がありそうだ。これを診療報酬で手当てし、全国の病院に広めようという厚労省の方針は高く評価したい。

 だが、今後の点数や要件の設定によっては、結局クラークの人件費の一部(もしくは大部分)が医療機関の持ち出しになるという事態も想定される。そうなれば、クラークを導入する病院は思うように増えず、勤務医の負担軽減が実現されない、ということになってしまう。せっかくの良策が「絵に描いた餅」にならないよう、ぜひともリアリティのある点数設定を期待したい。(和田 紀子=「診療報酬改定2008」特別取材班)

連載の紹介

どうなる?!診療報酬改定2008
後期高齢者医療の診療報酬はどうなるのか?産科や小児科や救急の評価は高まるのか?勤務医の負担軽減策は示されるのか?——注目を集める2008年度診療報酬改定に向けて、今秋から本格化する中医協の審議の模様を、独自取材によりリアルタイムでお届けします。
日経BP「診療報酬改定2008」特別取材班日経BP医療局の専門記者たちが総力を挙げて取材、情報分析します。

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