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脳神経外科医不足でt-PAが使えない

2007/10/25

 10月19日に開催された中央社会保険医療協議会中医協)の診療報酬基本問題小委員会では、「脳卒中発症早期の対応」について議論が行われた。

 脳卒中は現在、日本人の死因の第3位で、年間12万8000人が死亡している。中でも脳梗塞は脳卒中の死因の約60%を占めている状況だ。脳梗塞については、近年、発症後3時間以内に血栓溶解薬のアルテプラーゼt-PA)を投与することによって、後遺症の発生率を大きく減少できることが明らかになってきた。

 だが、日本では、2005年10月の承認から2007年1月までに4800例ほどにしかt-PAが使用されておらず、その恩恵を受けている患者は一握りにすぎない。その原因の一つは、t-PAが発症3時間以内の投与を必要する薬剤だからだ。発症から救急要請までの時間と救急要請から病院到着までの時間、計30分程度を勘案すると、「発症3時間以内に投与」を実現するには、病院到着から投与までを1時間程度で済ませることが求められる。投与までには、院内で手際よく診察、検査、画像診断などを行い、脳梗塞であることを確定診断することが必要になる。医療機関としては、t-PAの投与を行うために、24時間の体制が必要になるわけで、それが実現できている施設が多くないというのが現実なのだ。

 にもかかわらず、現状の診療報酬点数では、t-PAに特化した点数は設けられていない。そこで今回の中医協では、事務局から「t-PA投与には高い病院機能が要求されるので、その体制について、診療報酬上で評価する必要があるのではないか」との提言がなされた。

 会議では、自身も脳卒中診療に携わる医師委員の1人が、「t-PAは、誤って脳出血患者に使用すれば出血が止まらなくなるので、投与前の診断が非常に重要。そのためには、CTやMRIなどを備えた高いレベルの施設が必要だし、医師も24時間365日体制でスタンバイしておく必要がある。だが、最近では脳神経外科医の不足で、その体制を整えることが非常に困難になっている」と訴えた。同氏は、「医師不足は、産科や小児科でクローズアップされることが多いが、実は脳神経外科も入局者が少ない」とも説明した。

 診療報酬上の手当をすることで、脳神経外科医不足の問題がどこまで解決できるのかは未知数だが、今回の改定で、t-PAを使用できる医療機関の体制を、診療報酬で具体的にどう評価するのか、注目される。(富田 文=「診療報酬改定2008」特別取材班)

連載の紹介

どうなる?!診療報酬改定2008
後期高齢者医療の診療報酬はどうなるのか?産科や小児科や救急の評価は高まるのか?勤務医の負担軽減策は示されるのか?——注目を集める2008年度診療報酬改定に向けて、今秋から本格化する中医協の審議の模様を、独自取材によりリアルタイムでお届けします。
日経BP「診療報酬改定2008」特別取材班日経BP医療局の専門記者たちが総力を挙げて取材、情報分析します。

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