
図1 耳鼻咽喉科感染症から分離された肺炎球菌は耐性化が進行している 耳鼻咽喉科感染症サーベイランスから(PRSP;耐性、PISP;中等度耐性、PSSP;感受性)。
―― 前回は、薬剤耐性菌の拡大についてうかがいました。その結果、中耳炎の診療はどのような影響を受けているのでしょうか。
山中 耳鼻咽喉科で診察している急性中耳炎や急性副鼻腔炎などの症例から分離された肺炎球菌は、高率に薬剤耐性化が進行しているというデータがあります(図1)。同様に、インフルエンザ菌でも耐性化が進行しているデータが出ています。
これまで急性中耳炎は、経口抗菌薬によって容易に治癒していました。しかし、これらの耳鼻咽喉科感染症の二大起炎菌が抗菌薬に耐性化してきているため、従来の経験的な抗菌薬治療ではなかなか治癒しない難治例や遷延化例が急増しています。
―― 症例をご紹介願えませんか。
山中 写真の左から右へ「正常鼓膜」「急性中耳炎の軽症例」「急性中耳炎の重症例」と並んでいます(写真1)。中耳炎の診療に積極的に取り組んでいる全国的な研究グループである「中耳炎に対するより良い治療法を探る会(ATOMS)」での集計では、軽症は全体の約25%で、重症例が約30%、残りの中等症と分類されました。このように小児中耳炎の約75%が中等症から重症に分類される中耳炎となっています。このような重症例が適切に治療されないと、症状が進行して、中耳炎の合併症として急性乳様突起炎になってしまうことがあります。写真2のように耳の裏側が腫れて、そのため外耳が前に押し出されてきます。