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アフリカ出身の学長が語った地域社会の奥深さ

2020/10/28

 先日、京都精華大学のウスビ・サコ学長とZoomで対談をした。

 ざっとサコ学長の経歴を紹介すると、生まれは1966年、アフリカのマリ共和国のご出身。高校卒業後、国費留学生として中国に渡り、北京言語大学、南京の東南大学などで6年間、建築学を学び、1991年に来日された。京都大学大学院で建築計画を専攻し、博士課程修了後も日本学術振興会特別研究員として京都大学に残り、2001年に京都精華大学人文学部の教員として着任。専門は空間人類学で、住宅デザインと生活様式の関連を様々な国で調査し、フィールドワークの行動観察を通して、より良い人間関係やコミュニティーを築く環境を研究している。京都の町家再生、コミュニティー再生などの調査研究にも積極的だ。

 奥様は日本人で、ご本人は2002年に日本国籍を取得し、2013年に京都精華大学人文学部長、2018年に学長に就任された。アフリカ出身者が日本の大学の学長になったのは史上初だとか。

 サコ学長と対談して、「地域」に入っていくことの重要さを再認識させられた。私は、信州の山の村の診療所長を長く務め、(地理的)へき地の生活の厳しさとともに、地域に内包された人間の知恵や共同体の紐帯、都会人が失った強さを知った。サコ学長は、私が経験的に知ったことを、建築学をベースにした空間人類学のフィールドワークを介して、より体系的、実践的に深めておられ、驚嘆した。一種の天才だろう。地域医療を志す若い医師には、ぜひ、サコ学長の著作をお薦めしたい。日本人が見失った地域の背景が見えてくる。

著者プロフィール

色平哲郎(JA長野厚生連・佐久総合病院 地域医療部 地域ケア科医長)●いろひら てつろう氏。東大理科1類を中退し世界を放浪後、京大医学部入学。1998年から2008年まで南相木村国保直営診療所長。08年から現職。

連載の紹介

色平哲郎の「医のふるさと」
今の医療はどこかおかしい。そもそも医療とは何か? 医者とは何? 世界を放浪後、故若月俊一氏に憧れ佐久総合病院の門を叩き、地域医療を実践する異色の医者が、信州の奥山から「医の原点」を問いかけます。

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