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目の前の古びた病院に世界的な偉人がいた

2020/06/29

 個人的な話で恐縮だが、私の母の実家は新潟で鍼灸院を営んでいた。その実家の斜め前に「竹山病院」という産婦人科の病院があった。子どものころ、夏休みに母の実家に行っては、そのあたりを走り回って遊んでいたが、まさか目の前のすすぼけた病院に世界的な偉人がいようとは夢にも思わなかった。母方の親戚の農家の女性たちも竹山病院でお産をしており、あまりに身近だったからだ。

 生涯を竹山病院の勤務医で通したドクトール・オギノ、荻野久作(1882~1975)。一般には「オギノ式」の避妊法の始祖として知られているが、彼が解き明かした人体の神秘=「排卵は次の月経が来る16日から12日前の5日間に起きる」は、世界の産婦人科学会に燦然と輝く金字塔なのだ。ノーベル賞ものの業績といわれている。

 今年は、荻野が排卵期に関する学説をドイツの医学誌に発表してちょうど90年になる。そこで今回は、荻野の業績や医師としての生き方にスポットを当ててみたい。

著者プロフィール

色平哲郎(JA長野厚生連・佐久総合病院 地域医療部 地域ケア科医長)●いろひら てつろう氏。東大理科1類を中退し世界を放浪後、京大医学部入学。1998年から2008年まで南相木村国保直営診療所長。08年から現職。

連載の紹介

色平哲郎の「医のふるさと」
今の医療はどこかおかしい。そもそも医療とは何か? 医者とは何? 世界を放浪後、故若月俊一氏に憧れ佐久総合病院の門を叩き、地域医療を実践する異色の医者が、信州の奥山から「医の原点」を問いかけます。

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