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「新冠病毒」とインフォームド・コンセント

2020/04/29

 4月半ば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に対する緊急事態宣言が全国に拡大された。日々、感染者、死亡者ともに増え、様々な情報が氾濫している。

 言うまでもなく、医療の現場は、どのような疾病であれ、時の流れとともに変化が生じ、それに対応して治療法も変わる。昨日決めた方針が、今日の患者さんの容体に応じて修正されることは珍しくない。極論すれば「診療とは変化の連続」である。今回のCOVID-19への政府の対応も、1月の国内第1号患者の発生から2月のクルーズ船内の感染まん延、安倍首相の全国一斉休校要請、3月の東京五輪1年延期の発表、そして4月の緊急事態宣言と、折々に変化してきた。

 変化自体は必然だろう。問題は、変化に関して、国民へのインフォームド・コンセント(説明と納得)が成立していないことだ。

 事態が深刻になるにつれ、政府は国民に活動の自粛を促し、事業者へ休業を要請し、強い「痛み」を求めるようになった。当然、痛みを強いられる側は、いつまで痛みに耐えなければならないのか、痛みをどう和らげてくれるのか、仕事を失っても生活が続けられる保証はあるのか、といった切羽詰まった状況に追い込まれる。

 ところが、痛みの解消に向けた切実なメッセージが政府からなかなか伝わってこない。「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」の補正予算を見ても、今、国民が直面する困難を乗り越えるためのお金の投じ方とは思えない。

 例えば、新型コロナ収束後の観光、飲食、イベント需要などの喚起を目的としたと「GoToキャンペーン(仮称)」に1.6兆円かけるという。このキャンペーンでは、観光の場合、旅行業者などを経由して期間中の旅行商品を購入すると、代金の半分相当のクーポンなどが付与されるらしい。インバウンドの落ち込みを「V字回復」させる秘策のようだが、困っているのは旅行や飲食関連の業界だけではないのだ。

著者プロフィール

色平哲郎(JA長野厚生連・佐久総合病院 地域医療部 地域ケア科医長)●いろひら てつろう氏。東大理科1類を中退し世界を放浪後、京大医学部入学。1998年から2008年まで南相木村国保直営診療所長。08年から現職。

連載の紹介

色平哲郎の「医のふるさと」
今の医療はどこかおかしい。そもそも医療とは何か? 医者とは何? 世界を放浪後、故若月俊一氏に憧れ佐久総合病院の門を叩き、地域医療を実践する異色の医者が、信州の奥山から「医の原点」を問いかけます。

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