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国が掲げる「健康・予防」スローガンへの不安

2019/02/28

 最近、中国では「大健康」という言葉が盛んに使われているらしい。正確な概念はつかみきれていないが、健康の社会的決定要因も考慮しつつ、プライマリー・ヘルス・ケアの意識付けをしようとする意味合いが含まれていると聞く。

 2000年代初頭、世界保健機関(WHO)の国際調査で中国の医療は「最低レベル」と評価された。厳しい評価が中国の医療、保健関係者に与えた衝撃は大きく、そこから約20年かけて地道に改革を積み重ねてきた。

 習近平国家主席は、一昨年の中国共産党第19回全国代表大会で、「国民健康政策を整備し、国民に年間を通して網羅的な健康サービスを提供しなければならない」「今後、健康中国戦略を引き続き実施し、中国の特色ある基本医療衛生制度、医療保障制度、高クオリティーで効果的な医療衛生サービス体系を全面的に構築する」と強調したという。

 人民網日本語版(2017年10月20日)は、次のように誇らしげに伝える。

 「2016年末の時点で、全国基本医療保険加入者の数は13億人を超え、国民カバー率は95%以上となっている。制度を利用すれば病気になっても心配することなく病院に行くことができる。16年から、都市・農村統一基本医療保険制度を構築する改革が始まり、都市部と農村部の住民の基本医療保険と新型農村協力医療の2制度が全面的に統合された。同改革により、都市部と農村部の住民に、より公平に医療サービスが提供されるようになった」

 人民網日本語版の記事によれば、かつて厳しい評価を下したWHOも、「中国の医療改革は的を射ており、中国の衛生体系が正しい方向へ向かって進むよう牽引するだろう」と見方を変えた。こうした医療改革の積み重ねから「大健康」というキーワードが生まれたようだ。中国が経済的に発展し、人びとの生活が豊かになった証で、自然な流れだろう。

著者プロフィール

色平哲郎(JA長野厚生連・佐久総合病院 地域医療部 地域ケア科医長)●いろひら てつろう氏。東大理科1類を中退し世界を放浪後、京大医学部入学。1998年から2008年まで南相木村国保直営診療所長。08年から現職。

連載の紹介

色平哲郎の「医のふるさと」
今の医療はどこかおかしい。そもそも医療とは何か? 医者とは何? 世界を放浪後、故若月俊一氏に憧れ佐久総合病院の門を叩き、地域医療を実践する異色の医者が、信州の奥山から「医の原点」を問いかけます。

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