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TPP参加は「開国」ではなく「壊国」

2011/10/25

 このブログでも環太平洋経済連携協定TPP)参加への
 警鐘を鳴らし続けてきたが、野田政権が11月にハワイで開催される
 アジア太平洋経済協力会議(APEC)でのTPPの参加交渉に
 前向きであるという報道を見るにつけ、ますます危機感が募ってきた
 (関連記事:2011.7.22「ものごとには順番があるはずだ」)。

 地方の農山村地域で医療・福祉に携わっていると、
 野田佳彦首相や前原誠司民主党政調会長の
 積極姿勢は、正気の沙汰とは思えない。

 「自由貿易主義」の象徴ともいえるTPPは、
 日本国の社会システムを大きく改悪する可能性が高い。
 経団連などからは、一足先に米国と自由貿易協定FTA)を結んだ韓国を
 うらやむ声が聞こえてくるが、韓国はさらなる格差社会へと突き進んでいる。

 たとえば米韓FTAによって、韓国の医療・医薬品分野の
 自由化が急速に進められようとしている。
 韓国でも国民皆保険制度が機能しているが、FTAの締結によって
 経済特区では「保険適用外」の規定が認められ、
 高額の治療費で診療が行われる大型病院の建設が進められる見込みだ。

 経済特区の一つである仁川では現在、600床規模の
 ニューヨーク基督長老会病院(NYP Hospital)が建設されている。
 病室はすべて個室で、医療費を病院経営者が決められる。
 この病院は、韓国の健康保険で定められた医療費の
 6~7倍を請求するといわれる。また、従来、病院は
 出資者や債権者には利益配当ができなかったが、
 特区ではできるようにもなったという。

 さらに、医薬品の認定も国から独立した機関が
 担う仕組みに変更された。
 米国との協議機関を新たに設置し、
 そこで認証が行われる方向だ。

 このほかに、外資の医療保険分野への進出も懸念されており、
 韓国の公的医療保険制度は、危殆に瀕している。
 韓国政府は、米国との交渉中に一貫して
 教育と医療分野での開放はしないと断言してきた。
 しかし、経済特区で例外として自由診療を認め、
 営利病院の設立を許可したことで事実上、
 公的健康保険の基本的構図を崩したといえるだろう。

著者プロフィール

色平哲郎(JA長野厚生連・佐久総合病院 地域医療部 地域ケア科医長)●いろひら てつろう氏。東大理科1類を中退し世界を放浪後、京大医学部入学。1998年から2008年まで南相木村国保直営診療所長。08年から現職。

連載の紹介

色平哲郎の「医のふるさと」
今の医療はどこかおかしい。そもそも医療とは何か? 医者とは何? 世界を放浪後、故若月俊一氏に憧れ佐久総合病院の門を叩き、地域医療を実践する異色の医者が、信州の奥山から「医の原点」を問いかけます。

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