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政権交代から一年、国民皆保険の危機

2010/10/25

 民主党が「国民の生活が第一」とマニフェストに掲げ、戦後初めて、
 「政権交代」が実現してから一年が過ぎた。
 この国は、いったいどっちに向かっているのだろう。
 もう一度、政権交代の原点である「脱・小泉構造改革」を
 確認しておいた方がいいのではなかろうか。

 OECDの統計によれば、日本人の一人当たりGDPは、2000年の世界第3位が、
 小泉構造改革が終わった06年には20位、08年には23位に急落している。
 国際経営大学院IMD(スイス)が発表している国際競争力ランキングは、
 1990年に第1位だったが、08年には第22位。
 日本の国際競争力は高まるどころか、落ち続けている。
 「規制緩和」、「市場原理主義」、「競争」という手法が、
 日本が保ってきた有形無形の社会的基盤を堀り崩しているとしか言いようがない。

 その影響が最も端的に現れているのが、「危機に立つ国民皆保険」だ。
 国民健康保険の保険料滞納者数は、06年に480万世帯。
 1年以上保険料を滞納したため保険証を返還し、その代わりに
 資格証明書を交付された世帯数は35万を超えた。
 国保には、所得が不安定な自営業者や農業従事者だけでなく、
 企業や役所を退職した高齢者、非正規雇用の労働者がどんどん流入している。
 医療費が増加する一方で、保険料の収入は伸び悩んでおり、
 財政状況は危険水域に入っている。
 現役世代と退職世代の連続性を考慮すれば、国保と組合健保、
 共済との統合による「一元化」を真剣に議論しなくてはならない
 段階に差し掛かっている。

 しかし、自らの利害を最優先する大企業の保険者、その団体に天下りする
 厚生労働省の官僚たちは、統合による負担増を決して認めようとしない。
 とはいえ、このまま国民が多数の保険に分かれて加入していることの方が、
 よほど不合理であろう。
 格差が拡大すればするほど社会不安は募り、
 「勝ち組」も安閑としてはいられなくなる。

 9月1日、「21世紀型の新たな皆保険制度―日本の保健システムを再考する」
 という国際シンポジウムが開催された。
 諸外国は、日本の皆保険制度をモデルとして追いかけている。
 米国医学研究所理事長のハーベイ・ファインバーグ氏は、基調講演でこう語った。

著者プロフィール

色平哲郎(JA長野厚生連・佐久総合病院 地域医療部 地域ケア科医長)●いろひら てつろう氏。東大理科1類を中退し世界を放浪後、京大医学部入学。1998年から2008年まで南相木村国保直営診療所長。08年から現職。

連載の紹介

色平哲郎の「医のふるさと」
今の医療はどこかおかしい。そもそも医療とは何か? 医者とは何? 世界を放浪後、故若月俊一氏に憧れ佐久総合病院の門を叩き、地域医療を実践する異色の医者が、信州の奥山から「医の原点」を問いかけます。

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