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日本の健康長寿、秘訣は「ソーシャル・キャピタル」にあり

2010/05/25

 先日、ハーバード大学公衆衛生大学院教授のイチロー・カワチ氏の講演を聞いた。
 タイトルは、ずばり「日本人はなぜ長寿なのか?」。
 社会疫学を専攻するカワチ教授ならではの分析は新鮮だった。

 カワチ教授は、日米豪を比較し、日本人の塩分摂取の高さや過剰な
 アルコール摂取、喫煙率の高さ、高いストレスや過重労働を指摘し、
 食生活や生活習慣が必ずしも長寿の理由ではないのだろう、と推測する。
 保険制度が長寿に影響を与えているとはいえ、決定的要因ではないという。
 あれこれ要因を探った結果、行きついたのが社会的要因としての
 「ソーシャル・キャピタル」という概念だった。

 ソーシャル・キャピタルとは直訳すれば「社会資本」となろうが、
 ダムや道路、橋といったインフラの意味ではなく、
 人間関係やグループ間の信頼、規範、ネットワークといったソフトな資本、
 つまり人と人とのつながりを指し、近年は「社会関係資本」と訳すようだ。

 日本での例を挙げると、村祭り、盆踊り、寄り合いなどの行事がある。
 これらの根底には「情けは人の為ならず」「持ちつ持たれつ」「お互いさま」
 「おかげさまで」といった日本的な価値観がある。

 これは、私が暮らしている長野県佐久地方の人間関係のありようと重なる。
 ソフトウェア、ヒューマンウェアとしてのソーシャル・キャピタルは、
 確かに長寿県である信州にまだ色濃く残されている。

 佐久総合病院の同僚の長(ちょう)純一医師は、顔が見える関係、かかわり合いの
 ソーシャル・キャピタルが残る、そんな農山村地域での認知症について、
 次のように述べる。

著者プロフィール

色平哲郎(JA長野厚生連・佐久総合病院 地域医療部 地域ケア科医長)●いろひら てつろう氏。東大理科1類を中退し世界を放浪後、京大医学部入学。1998年から2008年まで南相木村国保直営診療所長。08年から現職。

連載の紹介

色平哲郎の「医のふるさと」
今の医療はどこかおかしい。そもそも医療とは何か? 医者とは何? 世界を放浪後、故若月俊一氏に憧れ佐久総合病院の門を叩き、地域医療を実践する異色の医者が、信州の奥山から「医の原点」を問いかけます。

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