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新病院建設に向けて

2009/02/16

 膠着状態が続いていた佐久総合病院の「基幹医療センター」(計画450床)、
 この新病院建設計画が、ようやく前へ踏み出した。

 かねて佐久病院では、長野県佐久市臼田(うすだ・旧臼田町)の
 本院(821床・1967年竣工)の老朽化が進み、大きな壁に突き当たっていた。

 例えば癌治療の放射線治療機器を導入しても、
 コンクリート壁の遮へいが弱いので、最大15メガ電子ボルトの
 出力が可能なのに、性能を抑えて使わねばならない。

 陽電子断層撮影装置(PET)や磁気共鳴画像装置(MRI)を
 増やしたくても、場所がない。

 MRIは、ひと月先まで予約でいっぱいだ。
 申し訳ないことに、病床の過半数を、時代遅れの6人部屋が占めている。

「農民とともに」を合言葉に地域医療に取り組んできた佐久病院も、
 正直いって「このままではパンク」しそうな状態になった。

 そこで2002年3月、本院に集中している病院機能を分化し、
 新たな土地に専門医療や救命救急医療を担う基幹医療センターを建設する。

 加えて、臼田の現在地には1次、2次医療中心の本院「地域医療センター」
(計画300床)を再整備する、そんな「再構築計画」が立案された。

 これを受けて佐久病院の経営母体であるJA長野厚生連は、
 2005年5月、新病院建設用地として佐久市役所ちかくの
 ツガミ信州工場跡地約4万坪を 24億6800万円で購入した。

 この地はJR小海線沿いの広大な緑地、美しい桜並木で市民に知られている。
 しかし、土地の用途は「工業専用地域」。

 用途変更をしなければ病院を建設できないのだが、
 佐久市は臼田地区の住民の同意が得られていないと、
 用途変更を認めず、建設計画は行き詰っていた。

 昨年の10月、長野県庁が「医療行政上、見過ごせない」と調整に乗り出し、
 知事調停を経て、今年2月7日、ツガミ跡地を基幹医療センターの候補地
 とすることで、土地問題にめどが立った。

 いよいよ新病院建設に向け、佐久病院のわれわれも動きださねばならない。

 新設する基幹医療センターのイメージは、外来は紹介患者、
 入院はICUと一般病床、救急外来は2次から3次救急が主体、
 本院として再整備する地域医療センターには若月俊一紀念館を付設、
 といったところ。

 佐久病院の六十数年の歴史の中でも、これほど大規模な病院機能の分化、
 新設、再整備は初めてだ。

 マスタープランに沿いながら、基幹医療センターが立地する中心市街地の皆さん、
 現在地の臼田の皆さん、そして地元医師会や各医療機関、行政の方々と
「ともに」新しい地域の医療をつくりあげたいと願っている。

 まずは、できるだけ多くの「回路」を通し、地域の住民の方々や福祉・医療、
 行政にかかわる皆さんと、率直な意見交換をしたい。

 医療崩壊が叫ばれる昨今、医師、医療機関もまた地域によって育てられる。

 佐久病院の夏川周介院長は「長野県における研修医教育」と題して、こう述べた。

著者プロフィール

色平哲郎(JA長野厚生連・佐久総合病院 地域医療部 地域ケア科医長)●いろひら てつろう氏。東大理科1類を中退し世界を放浪後、京大医学部入学。1998年から2008年まで南相木村国保直営診療所長。08年から現職。

連載の紹介

色平哲郎の「医のふるさと」
今の医療はどこかおかしい。そもそも医療とは何か? 医者とは何? 世界を放浪後、故若月俊一氏に憧れ佐久総合病院の門を叩き、地域医療を実践する異色の医者が、信州の奥山から「医の原点」を問いかけます。

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