地方では、団塊の世代が「70歳」に達し始める「2015年」に
大激震が走ると予想されている。
地方の医療崩壊ぶりは現在でも凄まじいのだが、
そこに決定的打撃が加わるのではないかと、
都道府県の医療政策担当者たちは戦々恐々としている。
というのは、2015年3月から「都道府県別の診療報酬体系」(?)が
スタートする予定だからだ。そのことは老人保健法から移行した
「高齢者の医療の確保に関する法律」に織り込み済みといわれる。
同法4条の「地方公共団体の責務」として、
「地方公共団体は、この法律の趣旨を尊重し、
住民の高齢期における医療に要する費用の適正化を図るために
取組及び高齢者医療制度の運営が適切かつ円滑に行われるよう
所用の施策を実施しなければならない」と定める。
さらに9条で「都道府県は、…必要があると認めるときは、
保険者、医療機関その他の関係者に対して必要な協力を求めることができる」
と記されている。
このあたりが「都道府県別の診療報酬」スタートの根拠になるのだろうか。
医療費の適正化が当初の設計図通りいくか否かによって、
都道府県別の診療報酬の範囲が大きく影響されるといわれている。
団塊の世代の「通り道」は、仕組みの破壊を伴ってきた。
先日も団塊世代の地方公務員の退職金が、
莫大な起債で賄われるとの報道があった。
国が、強い意思で「高コスト構造の是正」や「医療費適正化」を図ろうと
しているのは、団塊の世代という難物とどう向き合うかという動機づけが大きい。
現在の全国一律の診療報酬制度では「医療費適正化」に対応できないことを、
厚生官僚は熟知している。
医療制度は、だんだん中央集権的なコントロールが利かなくなる。
医療政策は、地方ごとのハンドリングへ、との筋書きのようだ。
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著者プロフィール
色平哲郎(JA長野厚生連・佐久総合病院 地域医療部 地域ケア科医長)●いろひら てつろう氏。東大理科1類を中退し世界を放浪後、京大医学部入学。1998年から2008年まで南相木村国保直営診療所長。08年から現職。

連載の紹介
色平哲郎の「医のふるさと」
今の医療はどこかおかしい。そもそも医療とは何か? 医者とは何? 世界を放浪後、故若月俊一氏に憧れ佐久総合病院の門を叩き、地域医療を実践する異色の医者が、信州の奥山から「医の原点」を問いかけます。
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