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メディコ・ポリス構想

2008/06/09

 今から20年前の1988年、佐久総合病院若月俊一院長(当時)は
メディコ・ポリス」なる概念を提起した。

 メディコとはひろく医学・医療を、ポリスとは
 都市(自治空間)を意味する。

 テクノ・ポリスは、企業誘致による地域づくりだが、
 メディコ・ポリスは保健・医療・福祉を軸とした、
 自律的な地域自治共同体である。

 それまで医療・福祉への投資は生産性がなく、
「捨て金」との意識が蔓延していた。
 この構想は、この旧来的感覚に変革を迫るものだった。

 メティコ・ポリス構想の基本的条件は、
 まず医療・福祉システムの整備。
 次に教育研究施設の充実。
 三つ目が住民の生計を確保できる産業の振興だ。

 それぞれの条件が相互に連関を保ち、
 たとえば医療・福祉と商業が、
 そして運輸やリゾート業ともつながり、
 協力して発展していく構想である。

 もっとも重要なことは、若者の安定した雇用をつくること。
 換言すれば、高齢者と若者を対象とした、新しい形の
「公共事業」の創設ともいえるだろう。

 元滋賀大学学長で経済学者の宮本憲一教授も
 この構想に注目し、佐久地域の三つの町村を調査した。
 地域の「内発的発展」や地域財政論の視点から
 この構想の有効性を検証し、実証し得た。

 宮本教授の研究によれば、佐久病院の地元、
 臼田(うすだ)地区の産業構造は、建設業19.6%、
 医療・保健が18.5%と推計されている。
 ちなみに農業は8.3%、商業は6.0%。

 首都圏で生活する人びとが「信州」という
 言葉から抱くイメージよりも、農業の寄与が
 はるかに少ないのではないか。

 一方、建設(つまり公共事業の請負)と
 医療・保健従事者がいかに多いか。

著者プロフィール

色平哲郎(JA長野厚生連・佐久総合病院 地域医療部 地域ケア科医長)●いろひら てつろう氏。東大理科1類を中退し世界を放浪後、京大医学部入学。1998年から2008年まで南相木村国保直営診療所長。08年から現職。

連載の紹介

色平哲郎の「医のふるさと」
今の医療はどこかおかしい。そもそも医療とは何か? 医者とは何? 世界を放浪後、故若月俊一氏に憧れ佐久総合病院の門を叩き、地域医療を実践する異色の医者が、信州の奥山から「医の原点」を問いかけます。

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