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医療事故

2008/05/26

佐久総合病院の同僚が、「くも膜下出血を肩こりによる頭痛と誤診し、
患者の女性(55)を死亡させた」として「業務上過失致死」の
疑いで書類送検された。

南佐久署の調べ、つまり警察発表では、「頭痛の症状があった女性や
付き添いの夫がくも膜下出血の可能性を訴えたが、コンピューター断層撮影
(CT)による適切な検査や早急な治療を怠り、女性をくも膜下出血で05年1月に
死亡させた疑い」(朝日新聞08年5月14日・長野県版)とされている。

医師として、患者さんのご冥福を心よりお祈りする。

同時に、同じ病院に勤める職員のひとりとして、ご遺族へお詫びする気もちで一杯だ。
今後、起訴、不起訴、略式命令…どのような結果になるか、捜査の行方を
静かに見守りたい。

この事故に関するコメントは差し控える。

ただ、医療事故一般について私見を少々述べておきたい。

2002年8月、名古屋大学付属病院で、潰瘍性大腸炎の治療として行われた
内視鏡手術で成人男性を死に至らしめる事故が起きた。

名大病院・医療事故調査委員会は、患者さんが亡くなってから
数ヵ月後に「調査報告書」を一般公開した。

そこには手術中の経過が詳述され、どこで執刀医が内視鏡を導くトロッカーを
挿入し、どのようにミスに至ったのかが克明に記されていた。

医療事故に詳しい外部からの弁護士も加わった調査委員会、委員たちが
「事実関係」を徹底的に明らかにしようとする執念が伝わってきた。

が、それ以上に心に残ったのは調査委員会が掲げた方針、
「逃げない」「隠さない」「ごまかさない」である。

かつて医療事故を起こした病院関係者が事実を糊塗する態度を
とってきたことへの反省を最大限にこめた方針だった。

日本の医療事故史における医師側(業界側)の「原罪」は重い。
患者側(社会側)の不信は深い。

そのことを率直に認めよう。

著者プロフィール

色平哲郎(JA長野厚生連・佐久総合病院 地域医療部 地域ケア科医長)●いろひら てつろう氏。東大理科1類を中退し世界を放浪後、京大医学部入学。1998年から2008年まで南相木村国保直営診療所長。08年から現職。

連載の紹介

色平哲郎の「医のふるさと」
今の医療はどこかおかしい。そもそも医療とは何か? 医者とは何? 世界を放浪後、故若月俊一氏に憧れ佐久総合病院の門を叩き、地域医療を実践する異色の医者が、信州の奥山から「医の原点」を問いかけます。

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