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急性期病院の地域包括ケア病棟開設(前編)
風雲急を告げる急性期病院の病床再編

2016/08/30
井上 雅博

 2016年4月の診療報酬改定によって、看護配置7対1の病棟を有する「急性期病院」は多大な影響を受けました。急性期の病床数を絞り込みたいと考えている厚生労働省は、7対1病棟にかなり厳しい要件を設定。急性期型の病院では、7対1病棟をどこまで維持するかの決断を迫られ、実際に病床転換に踏み切るケースも増えています。私が前に勤務していた病院での病床転換の経験も踏まえ、特に「地域包括ケア病棟」への転換のポイントなどを2回にわたりご紹介しようと思います。

「本当に急性期医療をしているか」が問われる
 これまでは、診療報酬上の看護基準に見合った看護師の数を揃えることで「急性期病院」を名乗り、高い入院基本料を算定できていました。しかし今春の改定では、7対1病棟の施設基準である「重症度、医療・看護必要度」の要件が見直され、所定の基準を満たす患者さんが25%以上であることが求められるようになりました。それまでの基準が「15%以上」だったので、一気にハードルが上がった形です。それだけ国は、急性期病院に対して、本当に急性期医療をしているのかを問うているともいえます。

 「重症度、医療・看護必要度」を測るための項目としては、これまでA項目とB項目の2種類がありましたが、これにC項目が加わりました。C項目は手術の実施に関する項目で、ここからも手術という「急性期」の医療を提供している病院を評価したいとの意向が汲み取れます。

 「重症度、医療・看護必要度」基準を厳格化した背景には、手術患者や救急患者の受け入れが少ない病院の病床転換を促す狙いがあります。病院の機能分化・連携を目的とした都道府県の地域医療構想策定の動きともリンクしたものといえるでしょう。

7対1病棟を持つ病院の5つの選択肢
 この急激な変化に対して、今年9月末までは診療報酬上、経過措置が設けられています。その期限が近付き、対応に困っている病院は少なくないはずです。取り得る対策の選択肢はそれほど多くはなく、院内に7対1病棟を残したいと考える病院は、主に下記の対策を検討し動いているようです。

(1)早期の転院・退院を図る
(2)救急車の引き受け件数を増やす
(3)病棟の一部を10対1看護にする
(4)病床数を減らす
(5)病棟の一部を地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟に転換する

 入院期間が長くなると、「重症度、医療・看護必要度」が低くなってくるため、(1)の早期転院・退院の推進は、病棟全体の「重症度、医療・看護必要度」を高める手段となり得ます。ただ、新たな入院が増えなければ、延べ入院患者数が減るため、病床稼働率は下がり収益は落ちます。また、患者さんの治療が不十分なうちに無理に退院調整を進めれば、病院としての評判を落とすことにもつながります。

 その意味で、(2)の救急患者の受け入れ拡大は、「重症度、医療・看護必要度」が高い新患を増やし、かつ病床稼働率を高める手段として有効です。ただ、現場の労働環境が悪化し、医師や看護スタッフが過重労働で退職したり医療事故が発生すれば、医療機関の経営に大きなダメージを与えることになりかねません。

著者プロフィール

井上雅博〇いのうえまさひろ氏。1993年島根医科大学卒。名古屋大学循環器内科に入局、外資系製薬企業、脳神経センター 大田記念病院(広島県福山市)を経て製薬企業に移籍。東京医科歯科大学大学院医療政策情報学分野大学院研究生としてDPCデータの研究に携わっている。

連載の紹介

ニュースウォッチャー井上雅博の「世相を斬る」
日々、新聞やネットで医療に関するニュースをもとに、skyteamの名前でアルファブロガーとして活動してきた井上氏が、ニュースをもとに考察していきます。

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