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重症者対応、在宅復帰強化を迫られる急性期病院

2016/01/26

 近年行われた診療報酬改定で、急性期病院に大きな影響をもたらしてきたのは、一般病棟の「重症度、医療・看護必要度」と「在宅復帰率」の要件でした。

 以前であれば、急性期病院は、病床数に合わせて7対1の看護体制を満たす数の看護師を採用していれば入院単価を高く維持することが可能でした。しかし、重症度、医療・看護必要度の高い患者さんの割合が一定以上であることが求められるようになり、2012年度改定では、7対1看護体制の病院について「15%以上」という要件が設けられました。さらに、2014年度改定では、7対1病院に対し在宅復帰率75%以上という要件も設定され、締め付けが強化されてきました。

術後患者の診療が報酬上評価されそうだが…
 今年4月の改定に向けた議論では、重症度、医療・看護必要度の運用の見直しが話題になっています。DPCデータの提出の際、新たに患者の重症度、医療・看護必要度などのデータを提出することが求められ、どの病棟でどういった患者さんに対して、どんな治療を行っているかが可視化されることになる見通しです。

 これまで、重症度、医療・看護必要度の高い患者さんの割合が低めの病院の中には、7対1入院基本料の算定を死守するために、必要性の高くない患者さんにまで心電図モニターを追加するような対策を取っているといった指摘がなされてきました。一方で、病院が早期離床を進めようとすれば重症度、医療・看護必要度が下がってしまい、努力しても報われにくいという矛盾も含んでいました。病棟ごとの患者特性などのデータが明らかになれば、そうした実態も浮き彫りになり、2年後の2018年度改定の議論にも影響してくるものと思われます。

 また、この春の診療報酬改定では、重症度、医療・看護必要度の基準自体も変更され、手術後の患者さんや救急搬送の患者さんを診た場合に一定の評価がなされる見込みです。

 重症度、医療・看護必要度の評価項目には、医学的な処置の必要性を評価する「A項目」と、患者さんの生活援助の必要性を評価する「B項目」がありますが、これに加えて「M項目」を新設。手術侵襲度に応じて、開頭術や開心術の術後5~7日、開腹術・骨の観血的手術の術後3~5日、内視鏡的手術の術後2~3日程度の期間はM項目1点として、「重症者」にカウントできるようにする方向です。また同じように、救急車で搬送された入院患者さんもA項目(2点)の対象とし、搬送日から1、2日間程度までは認める方向です。

 こうした変更は、対象となる患者さんの割合が高い病院にとっては朗報ですが、一方で、7対1入院基本料の算定の足切りライン、つまり重症度、医療・看護必要度を満たす患者の割合を引き上げ、現行の15%から例えば25%などといった水準に変更することも検討されており、急性期病院の関係者にとっては悩ましいところです。

7対1病院として存続できるか?
 在宅復帰率については、以前であれば、一般病棟から回復期リハビリテーション病棟などに移った場合でも「在宅復帰」としてカウントできましたが、次の改定からは本質的に自宅(高齢者住宅を含む)に帰ることがより重視されるように計算式も変更される見込みです。

 ここ数年、急性期病院の病床稼働率は落ちています。全国的な傾向として受療率が低下しており、平均在院日数をどんどん短縮しても、新規の入院患者さんの獲得が難しくなっていることが1つの理由です。

著者プロフィール

井上雅博〇いのうえまさひろ氏。1993年島根医科大学卒。名古屋大学循環器内科に入局、外資系製薬企業、脳神経センター 大田記念病院(広島県福山市)を経て製薬企業に移籍。東京医科歯科大学大学院医療政策情報学分野大学院研究生としてDPCデータの研究に携わっている。

連載の紹介

ニュースウォッチャー井上雅博の「世相を斬る」
日々、新聞やネットで医療に関するニュースをもとに、skyteamの名前でアルファブロガーとして活動してきた井上氏が、ニュースをもとに考察していきます。

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