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ナショナルデータベースがあぶり出す地域医療の「格差」

2014/08/28

 先日、「ナショナルデータベース」のお話を聞く機会がありました。ナショナルデータベースとは、「レセプト情報・特定健診等情報データベース」の通称で、全国の医療レセプトや特定健診のデータを各保険者団体から集めたものです。

 このデータは、厚労省の「医療費適正化計画」の実施のほか、公益性の高い研究などに活用することが認められています。今年3月には厚労省の「レセプト情報等の提供に関する有識者会議」が中間とりまとめを公表(厚労省資料参照)。今後どういった形で活用していくか、可能性を探っている段階です。

 2020年までに「健康寿命」を1年延ばすことなどを盛り込んだ「健康・医療戦略」(2014年7月22日閣議決定)にも、レセプトや特定健診のデータの活用が様々な形で盛り込まれており、今後、活用法に関する議論が活発化することになるでしょう。

注目される広島県と北海道の取り組み
 一方、都道府県の中には、既にナショナルデータベースを活用し、医療レセプトだけではなく介護も含めたレセプトを個人単位で連結させたデータベースを構築するケースが出てきています。

 例えば広島県は、「医療・介護・保健情報等を活用した健康づくりの推進に向けた連携協力体制」の構築に向けた検討を開始。県が昨年10月に公表した資料では、事業の目的について「広島県は全国的にみて健康寿命が短い、健診の受診率が低いなどの健康課題を抱えており、この課題解決の手段として、レセプトや特定健診データ等の医療・介護・保健情報を分析活用して、医療の提供状況や患者の受診動向、医療と介護の連携の実態などを把握し、地域実態を踏まえた効率的・効果的な健康づくりに取り組むこととする」としています。

 今後、広島県はこの事業の成果を生かし、地域の医療計画の立案などにつなげたいようです。実際に広島県側に聞いてみたところ、データベースはできたものの、個人情報の問題などがクリアできておらず、具体的にどう活用していくかは現時点では決まっていないとのことでした。

 北海道でもこの4月から、医療・介護レセプトのデータが連結され、二次医療圏や市町村ごとに、医療提供の内容や医療ニーズだけでなく介護保険の利用状況についてもほぼ包括的に見られるようになっています。

 従来は「人口当たり」で基準病床数を定めた医療計画が立案されてきました。しかし今後は、こうしたデータが整備されることで、二次医療圏の「医療・介護ニーズ」に基づいて都道府県が地域の医療の過不足を把握し、医療計画を策定することになります。

 私が聴講したセミナーでは、産業医科大学の松田晋哉教授が広島県のナショナルデータベースの解析結果を説明されました。二次医療圏ごとに救急やがん、心筋梗塞、脳卒中など250項目について県全体との比較がなされており、地域間の診療格差がはっきり分かりました。

著者プロフィール

井上雅博〇いのうえまさひろ氏。1993年島根医科大学卒。名古屋大学循環器内科に入局、外資系製薬企業、脳神経センター 大田記念病院(広島県福山市)を経て製薬企業に移籍。東京医科歯科大学大学院医療政策情報学分野大学院研究生としてDPCデータの研究に携わっている。

連載の紹介

ニュースウォッチャー井上雅博の「世相を斬る」
日々、新聞やネットで医療に関するニュースをもとに、skyteamの名前でアルファブロガーとして活動してきた井上氏が、ニュースをもとに考察していきます。

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