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現場も知っておきたい「医療・介護総合法案」の中身

2014/06/13

 今回の診療報酬改定では、急性期医療機関のふるい落としに向けた点数設定や、在宅医療の厳しい報酬引き下げが大いに注目されました。

 現在開かれている第186回国会では、難病の患者に対する医療等に関する法律案をはじめ、多くの重要な法案が議論されています。中でも注目されるのが、「医療・介護総合法案」。正式には「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案」で、予期しない死亡事故が発生した時に、院内での医療事故調査を義務付ける法案など、様々なものが含まれています。

 メディアでは、「介護サービス削減法案」だったり「地域医療・介護確保法案」などといった具合に、いろいろな意味合いで報じられているので、いまひとつ分かりづらいかもしれませんが、社会保障制度改革の中でも医療提供体制の見直しの“本丸”ともいえる第6次医療法改正につながる内容ですので、今回取り上げることにします。

「2025年」に向け各分野の改革を強化
 法案の概要は下記の通りで、かなり広範囲にわたるのが特徴です。

1.新たな基金の創設と医療・介護の連携強化(地域介護施設整備促進法等関係)
(1)都道府県の事業計画に記載した医療・介護の事業(病床の機能分化・連携、在宅医療・介護の推進など)のため、消費税増収分を活用した新たな基金を都道府県に設置
(2)医療と介護の連携を強化するため、厚生労働大臣が基本的な方針を策定

2.地域における効率的かつ効果的な医療提供体制の確保(医療法関係)
(1)医療機関が都道府県知事に病床の医療機能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)などを報告し、都道府県は、それを基に地域医療構想(ビジョン)(地域の医療提供体制の将来のあるべき姿)を医療計画において策定
(2)医師確保支援を行う地域医療支援センターの機能を法律に位置付け

3.地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公平化(介護保険法関係)
(1)在宅医療・介護連携の推進などの地域支援事業の充実と併せ、全国一律の予防給付(訪問介護・通所介護)を地域支援事業に移行し、多様化
※地域支援事業:介護保険財源で市町村が取り組む事業
(2)特別養護老人ホームについて、在宅での生活が困難な中重度の要介護者を支える機能に重点化
(3)低所得者の保険料軽減を拡充
(4)一定以上の所得のある利用者の自己負担を2割へ引上げ(ただし、月額上限あり)
(5)低所得の施設利用者の食費・居住費を補填する「補足給付」の要件に資産などを追加

4.その他
(1)診療の補助のうちの特定行為を明確化し、それを手順書により行う看護師の研修制度を新設
(2)医療事故に係る調査の仕組みを位置付け
(3)医療法人社団と医療法人財団の合併、持分なし医療法人への移行促進策を措置
(4)介護人材確保対策の検討(介護福祉士の資格取得方法見直しの施行時期を2015年度から16年度に延期)

 厚生労働省は、この法案を提出するに当たって、「持続可能な社会保障制度の確立」のために、効率的かつ質の高い医療提供体制を構築しつつ、地域包括ケアシステムを構築することで地域における医療および介護の総合的な確保を目指すとしています。団塊の世代が後期高齢者になって医療需要のピークとなる2025年に向け、体制整備を進めるというのが、一連の改革の狙いです。
 
 厚労省が2014年2月14日に提出した「社会保障制度改革の実施状況と今後の進め方」(参考資料)には、社会保障制度改革の工程表が掲載されています(官邸のホームページ参照)。

 そうした資料を見ると、医療だけでなく介護も年金も包括的に取り組み、進捗状況まで管理している姿が浮かび上がります。注目すべきはこの中に、2025年に向け医療体制を大きく変えるための仕組み「地域医療ビジョン」が入っていることです。

著者プロフィール

井上雅博〇いのうえまさひろ氏。1993年島根医科大学卒。名古屋大学循環器内科に入局、外資系製薬企業、脳神経センター 大田記念病院(広島県福山市)を経て製薬企業に移籍。東京医科歯科大学大学院医療政策情報学分野大学院研究生としてDPCデータの研究に携わっている。

連載の紹介

ニュースウォッチャー井上雅博の「世相を斬る」
日々、新聞やネットで医療に関するニュースをもとに、skyteamの名前でアルファブロガーとして活動してきた井上氏が、ニュースをもとに考察していきます。

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