日経メディカルのロゴ画像

日本の病院は今後どうなる?(上)
急性期医療の崩壊は必然だった

2013/10/22
井上雅博

 厚生労働省が9月4日に発表した医療施設調査の結果から、2012年10月時点で診療所数が10万152施設に上り、1953年に統計が開始されて以来、初めて10万施設を超えたことが判明しました。それとは逆に、病院数はピークだった1990年の1万96施設から8565施設に減りました。

 1948年に医療法が制定されて以降、病院は日本の医療の根幹をなしてきました。現在、国はその機能の大幅な見直し・分化を行おうとしており、病院を取り巻く環境はこれからますます大きく変化すると予想されます。

 今年の6月20日、日本経済新聞が「厚労省、医療法改正案の概要提示」と題した記事を報じました。それによると、国は今秋の臨時国会への提出を目指している第6次医療法改正に、各病院が病床の医療機能を都道府県知事に報告する制度の運用を2014年度後半から開始する方針を盛り込む予定です。さらに、報告された情報を基にして、都道府県は2015年度後半に「地域医療ビジョン」を策定、地域の病床の機能分化を推し進めるようです。

 国は、その時代々々に応じて病院機能の整備・変革を図ってきました。冒頭の病院数の減少もその影響の表れです。今回は、これまでの国の施策をまとめて病院機能(特に急性期)がどう変遷してきたのか、その上で各病院は今後どのように変貌すべきなのかを考えたいと思います。

過剰病床状態を生み出した第1次医療法改正
 病院にとって1つ目の転換点は、1985年の第1次医療法改正です。戦後間もない1950年には3408施設だった病院数は、1961年の国民皆保険制度の確立などにより医療の充実が図られた結果、1980年には9055施設にまで増えました。ところが、これに伴い医療費が急増して公的医療保険を圧迫。そのため、国は医療費の抑制を目的に、医療法制定から約40年を経て初めて大改正を断行したのです。

 その内容は、従来からあった公的病院の病床規制を私立病院にも適用すること。全国を2次、3次医療圏に分けて地域ごとに必要病床数を設定し、原則それを超えて病床を新設することを認めないようにしました。ところが、思いも寄らぬ“副作用”が生じてしまいます。同制度の施行直前に駆け込み増床(約20万床増)が起き、現在も尾を引いている過剰病床状態に陥ってしまったのです。

 その後、過剰病床状態は何を生んだのか――。皆さんもご存じのように、「社会的入院」の増加です。特段の医療処置が必要ない患者さんに長期にわたって入院してもらわなければ、病床が埋まらなかったわけです。これ以降の国の医療政策は、病院の機能分化(病床の削減)と在院日数の短縮をメーンに進められたといっても過言ではないでしょう。

 1992年の第2次医療法改正では、高度医療の提供を担う特定機能病院と同時に、長期療養が必要な患者向けの療養型病床群が制度化されました。1998年の第3次改正では、地域の診療所や中小病院から紹介患者を一定率以上受け入れる地域医療支援病院や、診療所の療養型病床群を新設。さらに2000年には、療養病床を一般病床から切り離す第4次改正が行われたほか、介護療養病床や老人保健施設などを施設サービスとして区分した介護保険制度が創設されました。

 見てお分かりのように、これらは全て病院の機能分化を図った施策です。介護保険制度の創設時には、それまでの療養病床の一部を医療から外して介護施設に位置付けることで、病床の削減も図られました。当然、社会的入院の患者さんは介護施設へシフトしていきました。

 病院の機能分化が進めば、在院日数も減ります。1990年は50.5日だった平均在院日数は、2000年は39.1日、2011年には32.0日へと大幅に短縮されました。この間に高齢化率は12.1%(1990年)から23.0%(2010年)に高まり、入院対象となる患者数は増加していますが、病床数は167万7000床弱(1990年)から158万3000床(2010年)に減少しました。病床数は減りましたが、各入院患者の在院日数が短くなったので、より多くの患者さんが急性期病院に入退院できるようになったわけです。

著者プロフィール

井上雅博〇いのうえまさひろ氏。1993年島根医科大学卒。名古屋大学循環器内科に入局、外資系製薬企業、脳神経センター 大田記念病院(広島県福山市)を経て製薬企業に移籍。東京医科歯科大学大学院医療政策情報学分野大学院研究生としてDPCデータの研究に携わっている。

連載の紹介

ニュースウォッチャー井上雅博の「世相を斬る」
日々、新聞やネットで医療に関するニュースをもとに、skyteamの名前でアルファブロガーとして活動してきた井上氏が、ニュースをもとに考察していきます。

この記事を読んでいる人におすすめ