日経メディカルのロゴ画像

“バルサルタン問題”が問いかけるもの(下)
使途の定めない、おかしな奨学寄附金は見直せ!

2013/08/19
井上雅博

 前回は、臨床研究を行う大学側の資金事情や製薬企業間の医薬品開発競争の現状などを取り上げ、“バルサルタン問題”が生じた背景について触れました。今回はそうした問題を踏まえ、これからの臨床研究のあり方を考えてみたいと思います。

強化される利益相反マネジメント
 製薬企業が特定の研究機関に提供する奨学寄附金は、小額なら数万円~数千万円、高額の場合は億単位に上ります。それなのにこれまであまり問題視されなかったのは、1990年代まで利益相反(Conflict of Interest:COI)についてあまり意識されてこなかったことがあります。

 しかし、米国でゲルシンガー事件が発生したのをきっかけに、欧米では利益相反のマネジメントが強化されることになりました。同様に日本でも、2004年 に遺伝子治療関連会社の非公開株の取得を巡って利益相反が問われる事件が生じ、社会が厳しい目を向けるようになりました。そして、今回問題となったバルサルタンに関する研究の多くが2002~2004年頃に開始されたことも明記しておく必要があると思います (KYOTO HEART Studyは2004年1月に開始、Jikei Heart Studyは2002年1月~2004年12月に実施)。ただし厚生労働省は、2003年7月に施行した臨床研究に関する倫理指針において、臨床研究計画書に「臨床研究に係る資金源、起こりうる利害の衝突及び研究者等の関連組織との関わり」を記載することを研究責任者に求めています。

著者プロフィール

井上雅博〇いのうえまさひろ氏。1993年島根医科大学卒。名古屋大学循環器内科に入局、外資系製薬企業、脳神経センター 大田記念病院(広島県福山市)を経て製薬企業に移籍。東京医科歯科大学大学院医療政策情報学分野大学院研究生としてDPCデータの研究に携わっている。

連載の紹介

ニュースウォッチャー井上雅博の「世相を斬る」
日々、新聞やネットで医療に関するニュースをもとに、skyteamの名前でアルファブロガーとして活動してきた井上氏が、ニュースをもとに考察していきます。

この記事を読んでいる人におすすめ