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どっこい生きてる「医療事故調査委員会」

2012/11/20

 医療事故調査委員会の設立を巡っては、厚生労働省日本医師会、患者団体などからさまざまな意見が出されてきました。医療事故調査委員会とは、患者さんが原因不明のまま死亡、あるいは重篤な後遺症が残るような医療事故が発生した際に、その原因究明のために設置されるもの。同じ調査委員会といっても、病院内に設置するものから、対応を一手に引き受ける第三者機関まで、その設置方法もさまざまです。

 2005年に日本内科学会のモデル事業として、病院外に設置する調査委員会の試行が始まり、2008年には厚労省の大綱案として第三者機関の設置は法制化寸前の状態まで進みました。ですが、2009年に政権交代が起こったこともあって、結論が出ないままに議論が止まっていたのです。

 すっかり、議論があったことも忘れられていたこの問題ですが、今年6月に日本医師会が「医療事故調査制度のあり方に関する基本的提言」をまとめ、第三者機関による医療事故調査委員会の設置を提言したほか、内科学会を引き継ぐ形でモデル事業を行っている日本医療安全調査機構も今年10月、同機構の運営委員会で「診療行為に関連した死亡の調査分析事業のあり方に関する企画部会」報告書を公表、具体的な第三者機関のあり方の議論を開始するなど、今年になって急に止まった時計が動き出した感じがあります。ですが、医療界は第三者機関の設置で一本化されているわけではなく、未だ反対する医師も少なくありません。

医療訴訟の増加が医療事故調の議論につながった
 医療事故調査委員会の設置が求められるのは、医療訴訟において「訴訟によって事故の真実を知りたい」と主張する患者さんや家族が多いからです。

 医療訴訟については、大きなターニングポイントが3つありました。まずは1999年の横浜市立大学付属病院の患者取り違い事件と都立広尾病院(東京都渋谷区)における消毒薬の誤投与です。これらの事件以降、国民の医療に対する不信は強まり、“医療事故”の報道が増えました。結果、1999年は年間677件だった医療に関する民事訴訟の件数は2004年には1100件を超える水準となっています。

 ただ、医療に関する民事訴訟の件数自体は、2004年をピークに現在は800件程度で落ち着いたようです。これはインフォームドコンセントの徹底や、同意説明文書を作成しておくなど、訴訟を未然に防ぐための現場の努力や、各医療機関がリスクマネージャーを配置するなど事故再発防止に取り組んだことが実を結んだのでしょう。

著者プロフィール

井上雅博〇いのうえまさひろ氏。1993年島根医科大学卒。名古屋大学循環器内科に入局、外資系製薬企業、脳神経センター 大田記念病院(広島県福山市)を経て製薬企業に移籍。東京医科歯科大学大学院医療政策情報学分野大学院研究生としてDPCデータの研究に携わっている。

連載の紹介

ニュースウォッチャー井上雅博の「世相を斬る」
日々、新聞やネットで医療に関するニュースをもとに、skyteamの名前でアルファブロガーとして活動してきた井上氏が、ニュースをもとに考察していきます。

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