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世紀の大誤報に見る報道のあり方

2012/11/13

 先日、山中先生のノーベル賞の受賞ニュースの後、大手新聞の1面やテレビのニュース番組で報道された「iPS細胞による世界初の臨床応用」という“ビッグニュース”は、結果として“世紀の大誤報”となりました。

 いくつかの新聞社が報道を見送っていることからも分かるように、さほど手のこんだ“詐欺”だったわけでもないのに、一部のメディアが十分な裏取りもなく、研究者の言うままに報道。その後は、集中的に当事者を巡っての報道が行われ、検証記事や処分内容も含めて、お決まりの「犯人探し」がメーンとなっていました。今回のような検証で、報道や取材の体制がきちんと「改善」されるのかはなはだ心配になります。

 本来、iPS細胞の臨床応用といった専門的なニュースであれば、メディア側の専門的な部署で、しっかりと二重、三重のチェックがなされるべきですし、ふさわしい専門家にコメントを求めることも必要でしょう。

 今回、読売新聞は誤報について、担当した記者と上司による確認の怠りがあったと、次のように検証しています。

 科学部の記者は、デスクらにメールで疑問点を伝えたことで「安心してしまった」と言い、森口氏から動画を含め様々な資料を示されて説明を受けた後は、専門家1人に見解を求めた程度で、当初の疑問が解消されたと思い込んだ。

 一方、メールで取材内容を共有していたデスクらは「記者が裏付けを取っているはずだ」と誤解し、詳しい説明を求めなかった。デスクの指示がないことで、記者は自身の取材内容を十分と受け止めてしまった。双方の認識の違いが誤報を生む大きな要因となった。
(読売新聞2012年10月26日「浮上した疑問点を軽視、デスクは裏付け指示せず」)

著者プロフィール

井上雅博〇いのうえまさひろ氏。1993年島根医科大学卒。名古屋大学循環器内科に入局、外資系製薬企業、脳神経センター 大田記念病院(広島県福山市)を経て製薬企業に移籍。東京医科歯科大学大学院医療政策情報学分野大学院研究生としてDPCデータの研究に携わっている。

連載の紹介

ニュースウォッチャー井上雅博の「世相を斬る」
日々、新聞やネットで医療に関するニュースをもとに、skyteamの名前でアルファブロガーとして活動してきた井上氏が、ニュースをもとに考察していきます。

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