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同性婚の合法化が進む米国、対して日本は…

2009/09/07

 2009年に入り米国では、4月のアイオワ州とバーモント州に続き、5月にメーン州、6月にニューハンプシャー州と同性婚を合法とする州判決が相次ぎました。

 米国でのこうした動きは、04年5月、マサチューセッツ州最高裁で初めて同性婚が合法とされたことに口火を切り、その後、08年5月にカリフォルニア州(しかし同年11月に再び違法化)、同年10月にコネティカット州で同性婚の合法化が認められました。

 今回、立て続けにこの問題が認められたことは、米国民の同性愛者に対する許容度の変化を表したものといえるでしょう。今秋にはニューヨーク州議会でも同性婚合法化に対する審議が予定されています。

 米国における同性愛者の権利問題は、1960年代の公民権運動に端を発し、80年代のエイズ問題を経てより一般化しました。しかし、共和党の第41代ジョージ・H・W・ブッシュ大統領政権(1989-1993)下では同性婚を違法とする政策が取られ、一時期議論の進展が阻まれました。湾岸戦争中にゲイの入除隊問題は度重なり議論されましたが、経済危機、医療保険対策に追われ、同性愛者の権利問題は暗礁に乗り上げていました。

 1993年、カウンターカルチャーの象徴と評された民主党若手のウイリアム・J・クリントン氏が、アメリカ歴史上初めて同性愛者の人権を支援する立場で選挙戦に立ちました。サンフランシスコを中心に栄えた同性愛・両性愛者へのqueer-bashingに反発する多くの同性愛者たちがこの政策を熱烈に支持しました。この大統領戦でクリントン陣営はブッシュ陣営に勝利し、第42代ビル・クリントン政権が発足したのです。

 半世紀以上もの長い闘いを経て、今日の米国の同性愛者たちは、自らの同性婚の公的権利を勝ち取ったのです。

 しかし全米50のうち6つの州で同性婚が合法化されたとはいえ、世論調査によると、「父親と母親の存在があってこそ、心身共に健やかな子どもが育つ」という考えには根強いものがあるようです。17世紀以降、清教徒・ピューリタンによる神権制社会が長く市民思想を支配してきたアメリカ社会で、かねて保守層が多いとされ黒人奴隷制度下に植民地政策を切り抜けてきた東海岸から同性婚の合法化が進んだ歴史的経緯にも、僕は興味深さを感じます。

 この問題、日本においてはいかがでしょうか?

 日本では、同性を好む同性愛者ないし両性愛者や、自分の体と心の性が一致しない状態のことを、一般には「性同一性障害」と称しています。歴史上、二つの大戦を経験し「産めよ、増やせよ」と富国強兵をうたった日本では、国力に寄与しない同性愛者は極端な排除を受けた過去がありました。

 長い時を経て2000年前後になり、国内でも同性婚の合法化を検討する動きが本格化しました。その際、戸籍法・第113条における続柄の記載上、同性同士の婚姻をどのようにすべきかが議論されましたが、この問題は米国、英、ほかの国々では浮上しませんでした。そもそも戸籍登録制度は多くの国に存在しない東アジア独自の国家管理システムだからです。

著者プロフィール

今高城治(獨協医科大学小児科講師)●いまたか じょうじ氏。獨協医科大学医学部卒、慶應義塾大学文学部(哲学)卒、医学博士。小児神経学会評議員。現在、慶應義塾大学法学部(通信教育課程)に在籍し政治学を専攻中。

連載の紹介

今高城治の「医療と生命倫理のパンセ」
文明と医学の進歩は人類に本当の幸せをもたらすのか?超重症児医療に従事しながら、哲学・倫理学・法学を修める今高氏が、独自の世界観を背景に現代の倫理、哲学、思想、サイエンスに対する諸問題を論考していきます。

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