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「心の中をのぞく技術」が現実化する 

2008/12/16

 12月11日付の米国科学雑誌『ニューロン』に日本発の興味深い論文が掲載されました。国際電気通信基礎技術研究所神経情報学研究室の神谷之康室長、宮脇陽一研究員らのチームが、fMRI(functional-MRI)を用いて、後頭部の第1視覚野の脳血流量の変化を応用し、目で見た文字や図形などの情報をコンピューター上で画像に再現する技術を考案したのです。この技術では、約1億通りもの脳内画像が読み取れるそうです。
 
 会話のできない人が、脳内でイメージした文字をコンピューター画面上に表現し会話ができる。歩くことの困難な人の脳の指令を信号化し自由に車いすを操作できる。義手をつけた人が、手指の動きをイメージすることで義手を自在に動かせるようになる。

 今日までにも、体を動かすことの不自由な筋委縮性側索硬化症の患者さんにおける脳波を用いたBrain Computer Interface(BCI)によるコミュニケーションツールは米国では臨床応用され始めていましたが、今回発表された脳内イメージングを画像化する技術がさらに進むと、世界中の要介護者の生活の質(QOL: quality of life)や日常生活動作(ADL: activities of daily living)はこれまでとは比較にならないほど充実したものとなることでしょう。
 
 神谷室長らは、さらにこの技術を応用することで夢や空想など、頭で思い浮かべているが実在しない映像の読み出しにつながる日も遠くはないと話されています。

 もしかしたら、「自分の夢を映像化したい」という、古来よりの願いがかなう時代が近い将来、訪れるかもしれません。

 野生動物がどんな夢を見ているのか、そのロマンが解き明かされる時代が本当に来るのかもしれません。

 僕個人の興味としては、宗教学の真理を明らかにしてみたいです。

 さらに医学的には、言語機能を獲得する以前の新生児期、乳児期の脳内イメージングの解析画像の作成にも関心があります。寝たきりの超重症児自身の考えをもとに、個人個人の希望を尊重した、より良い治療方法を相談していきたい思いです。

 この度の成果について宮脇研究員は、人の心をのぞくことが可能な技術につながる恐れのあるこの技術について、「技術の進歩に合わせた法的な整備が必要である」と助言されました。

 過去の犯罪捜査においては、脳波計、発汗量測定を用いた自律神経機能解析器さらにはサーモグラフィーなどを用いた「ウソ発見機」が開発された歴史があります。

著者プロフィール

今高城治(獨協医科大学小児科講師)●いまたか じょうじ氏。獨協医科大学医学部卒、慶應義塾大学文学部(哲学)卒、医学博士。小児神経学会評議員。現在、慶應義塾大学法学部(通信教育課程)に在籍し政治学を専攻中。

連載の紹介

今高城治の「医療と生命倫理のパンセ」
文明と医学の進歩は人類に本当の幸せをもたらすのか?超重症児医療に従事しながら、哲学・倫理学・法学を修める今高氏が、独自の世界観を背景に現代の倫理、哲学、思想、サイエンスに対する諸問題を論考していきます。

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