日経メディカルのロゴ画像

22世紀、「格差」は宇宙に広がる 

2008/10/27

 2008年9月、中国の宇宙遊泳のニュースに引き続き、10月に入りニューデリーからインド初の無人月探索機が打ち上げられたニュースが世界を巡りました。

 月探索機打ち上げの歴史は1966年、旧ソ連「ルナ9号」の月面着陸を皮切りに、1969年、米国「アポロ11号」が人類初の月への一歩を成し遂げ、米ソ宇宙開発競争の幕を開けました。

 時を経て、第3の国は1990年の日本で、ロケットの名前は「ひてん」であります。

 さらに2003年にはヨーロッパ宇宙機構(ESA)の「スマート1号」、2007年には中国の「嫦娥(じょうが)1号」が続きました。今回のインドの月探索機は世界で6番手となります。

 来年以降には7番手として韓国が月探索機の計画があることを公式に発表しています。

 人類が大気圏を脱出して月を目指した当初の目的は、「月に到達すること」にありました。しかし、各国が月へ到達することが可能となった現在では、われわれが月へと探索に向かう目的は大きく変貌しました。

 人類は「実際の生活環境として月が適切であるのか」とその生態系を観測するようになりました。また、近年ではウランやトリウムなど「産業的に応用可能な鉱物資源」の無限の可能性を探るようになりました。

 もし、に人類に非常に有用な鉱物が大量に存在することが発見されたならば、各国は競い合ってその資源を宇宙産業として様々な分野に取り入れることでしょう。

 ちょうど、コロンブスが新大陸・アメリカを発見し、後に人々は巨額の富を手にする夢を抱いては命をかけて先を争った19世紀の「ゴールドラッシュ」にも似たような状況が訪れつつあるのかもしれません。しかも、われわれの予想を遙かに超える規模での話です。
 
 月の資源はそもそも誰のものなのでしょうか?

 1984年、月その他天体における国家活動を律する協定として「月協定」が批准されました。そこには「月の資源は人類の共有財産である」と声明が提唱されています。

 しかしながら国際連合での発効から20年以上経過した現在においても、この協定に参加している締結国は、独自の月探索計画を持たないわずか13の国家にすぎません。さらに有人宇宙飛行を施行してきた国にいたっては一国も締結国となっていません。

 最近さらに各国の宇宙開発が盛んになっている現状をみると、「月協定」で謳われた21の条文は、事実上、死文化していると言わざるを得ません。

著者プロフィール

今高城治(獨協医科大学小児科講師)●いまたか じょうじ氏。獨協医科大学医学部卒、慶應義塾大学文学部(哲学)卒、医学博士。小児神経学会評議員。現在、慶應義塾大学法学部(通信教育課程)に在籍し政治学を専攻中。

連載の紹介

今高城治の「医療と生命倫理のパンセ」
文明と医学の進歩は人類に本当の幸せをもたらすのか?超重症児医療に従事しながら、哲学・倫理学・法学を修める今高氏が、独自の世界観を背景に現代の倫理、哲学、思想、サイエンスに対する諸問題を論考していきます。

この記事を読んでいる人におすすめ