日経メディカルのロゴ画像

人類が宇宙生態系にメスを入れるとき 

2008/10/07

 スタンリー・キューブリックとアーサー・C・クラーク脚本の『2001年宇宙の旅』の舞台となった年から7年が過ぎた2008年9月27日、中国の有人宇宙船「神舟7号」が宇宙遊泳に成功したニュースが世界を巡りました。中国は、国際宇宙ステーションの開発を2020年に実現するという目標を掲げて、巨額の資金を投入しています。今日、中国の宇宙開発は実力ともにアメリカ、ロシアと並ぶ宇宙開発先進国に台頭しました。

 宇宙空間から帰還した宇宙飛行士たちは、無事に着陸したモジュールカプセルの中で40分間ほど地球の重力に体を慣らしてから外に出ました。すぐさま待機する専門の医師団による診察と体調のチェックが行われました。

 宇宙空間での生活、つまり人体に重力の影響がなくなった際、われわれの生体機能はどのように変化するのでしょうか? どのような宇宙服が適切なのでしょうか?  空気のない無の空間でお互いの会話はどのようにすればよいのでしょうか? さらに帰還後の生活における長期的な影響はあるのでしょうか?

 近い将来、さらに安全な宇宙遊泳が実現されるためには、宇宙工学技術の進歩のみならず、医学においても宇宙人体医学の進歩が必要です。

 宇宙人体医学は、各国の軍事力の増強と並行して、冷戦時代のアメリカ、ロシアを中心とする宇宙開発競争と共に発展してきました。超高速状態や潜水状態における人体生理学機能を研究する航空医学潜水医学など、軍事産業医学の分野と強く関連しています。

 工学が発展する以前の19世紀の航空医学では「音速を超えるほど飛行機が速くなると、空気が真空になり人は窒息するのではないか?」など、様々な推論が論じられました。

 人類はそんな問題を一つひとつ、医学と工学の技術革新により見事に解決してきました。
 
 かつて、人類が空を飛ぶ日が現実に訪れることを夢に見ても、その日を予測しえた古代人はいなかったでしょう。しかし、今日のわれわれは、近い将来、宇宙での生活が実現するであろうことを疑いはしません。

 現に人類は急激な人口増加を抱え、宇宙工学技術という開発力で宇宙ステーション構想を現実のものとすることが、人口問題を解決する有力な手段と考えています。

著者プロフィール

今高城治(獨協医科大学小児科講師)●いまたか じょうじ氏。獨協医科大学医学部卒、慶應義塾大学文学部(哲学)卒、医学博士。小児神経学会評議員。現在、慶應義塾大学法学部(通信教育課程)に在籍し政治学を専攻中。

連載の紹介

今高城治の「医療と生命倫理のパンセ」
文明と医学の進歩は人類に本当の幸せをもたらすのか?超重症児医療に従事しながら、哲学・倫理学・法学を修める今高氏が、独自の世界観を背景に現代の倫理、哲学、思想、サイエンスに対する諸問題を論考していきます。

この記事を読んでいる人におすすめ