「感染管理に、手指衛生は必要だと思いますか?」
この質問に「いいえ」と答える医療従事者はいないと思う。トイレに行って便座に触れた手を洗わないまま、リンゴを素手で食べれば、便座をなめているのと同じ。コッホが細菌説を確立して以来、目に見えない微生物はあちこちにいて、手を介して口に入ることは、誰でも知っている。だから、手指衛生の必要性も、皆、理解している。
そこで次の質問。「患者さんをケアする現場において、あなたはいかなるときも手指衛生を行えていますか?」
こう聞かれると、「はい」という答えはぐっと少なくなるだろう。手指衛生の達成率を実際に調査すると、さらに「はい」の回答率は小さくなる。ここに認識と現実のギャップが存在する。手指衛生が必要であることは理解しているが、実際はできていないし、できていても、それは勘違いであることが少なくないのだ。
新規に会員登録する
会員登録すると、記事全文がお読みいただけるようになるほか、ポイントプログラムにもご参加いただけます。
著者プロフィール
堀越裕歩氏(東京都立小児総合医療センター感染症科)●2001年昭和大卒。沖縄県立中部病院、昭和大学小児科、国立成育医療センター(当時)などを経て、08年7月カナダ・トロント小児病院にクリニカルフェローとして留学。10年8月から現職。

連載の紹介
堀越裕歩の「小児感染症科はじめて物語」
カナダでの2年の臨床留学から帰国し、小児専門病院で与えられたミッションは「小児の感染症科の立ち上げ」。手指衛生の徹底から始まり、時には抗菌薬処方をめぐって衝突…。国際標準の小児感染症診療を日本で実践する中での奮闘をご紹介します。
この連載のバックナンバー
-
2015/06/30
-
2015/02/13
-
2014/10/20
-
2014/06/30
-
2014/03/04