日経メディカルのロゴ画像

『日本の論点』で医師不足の背景を解説しました

2011/11/17

 2006年9月20日に始まったこのブログでは、日本の医療や医師を取り巻く様々な問題について意見を述べさせていただいてきましたが、いよいよ11月一杯で終了となります。恐らく次回の掲載が最終回になると思いますが、今回は、先日文藝春秋社から発行されたばかりの『日本の論点2012』をご紹介したいと思います。

 『日本の論点』は、日本に山積する重要問題について各分野の論客が持論を展開する論争誌で、1993年の創刊以来、毎年の刊行を重ねています。実は今回、同書の2012年版で取り上げられた84の「日本の論点」の1つ、「医師不足は本当か」に、私の意見を採用していただくことができました。これも、このブログなどを通して私の意見が広く社会から注目された賜物と感じています。いろいろな意見をお寄せいただいた読者の方々、そして私を励ましていただいた編集部の皆様には心から感謝しています。

 『日本の論点2012』は、「2012年 新しい現実、危機からの脱出」から始まり、24の大項目を取り上げています。「医師不足は本当か」は、「超高齢化社会のゆくえ」という大項目の中に収載されました。

 私はこの中で、「医療崩壊の原因が、医師不足を認めなかった国の過誤にあるのは明らか」と題して、日本医療の崩壊を予言した米国のサリバン厚生長官のエピソード(2010. 11. 29、20年前の「サリバン長官エピソード」の真相)から話を始め、日本のフルタイム勤務の医師の数は先進国最低であること、特に実働医師数がグローバルスタンダードからみて大きく不足している実態を報告しました。

 続いて、「原因は明治から続く経済最優先の体質にある」として、渋沢栄一の指摘した「官尊民卑」や、経済界における「道徳経済合一論」不足の問題(2008. 9. 1、日本崩壊の根底にあるのは「官尊民卑」)、さらに朝河貫一が『日本の禍機』(明治42年)で「日本人は愚かな指図や悪い指揮にも簡単に従ってしまう傾向がある」と苦言を呈していたことを紹介しました。

 そして最後に「“日本の医療費は高い”という政府の情報操作」と題して、先進国で最低のGDP当たり医療費を、あたかも日本の医療には無駄があるように繰り返し発表してきた政府の責任と、私たち国民一人ひとりが起ちあがる必要性を訴えました。

 今回文中では、OECD Health Data 2011を一部改変して作成した以下の表から「日本の人口当たり医師数」と、「日本の人口当たり医師の養成数」を各国と比較して紹介しました(注:数値のみ紹介し、表は掲載されていません)。

 今まで、わが国では人口10万人当たりの医学部卒業者数があまり話題になってきませんでしたが、この表を見ると、先進国最低の医師数の日本では、当然と言えば当然ですが医師養成数もまた最低であることが明らかです。これとは対照的に、日本と同様に医師不足が問題になったイギリスが、しっかりと医師増員に舵を切ったことも確認できます。

著者プロフィール

本田宏(済生会栗橋病院院長補佐)●ほんだ ひろし氏。1979年弘前大卒後、同大学第1外科。東京女子医大腎臓病総合医療センター外科を経て、89年済生会栗橋病院(埼玉県)外科部長、01年同院副院長。11年7月より現職。

連載の紹介

本田宏の「勤務医よ、闘え!」
深刻化する医師不足、疲弊する勤務医、増大する医療ニーズ—。医療の現場をよく知らない人々が医療政策を決めていいのか?医療再建のため、最前線の勤務医自らが考え、声を上げていく上での情報共有の場を作ります。

この記事を読んでいる人におすすめ