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「国策に奉仕する医療」との決別を!

2010/09/16

 この10年近くの間、地域で崩壊していく医療現場を目の当たりにして、医療のアクセスだけでなく質を守らなければと、医療再生の必要性を訴えてきました。しかし、医療体制を守るために、まずは一般の方に医療者の窮状を理解していただこうと思って発言すると、テレビの全国放送で「傲慢だ!」と非難されるような厳しい現実がありました。
 
 このため、9月19日に開催される医療再生フォーラム前回記事参照)でも、医療者が団結し、患者さんと共闘するために、どのようなアプローチが必要なのだろうと思い悩んでいました。

 そんな矢先に、この活動を通じて知り合った市民団体の方からいただいたある小冊子を見て、大きな衝撃を受けたのです。

 この小冊子は、2009年10月31日に愛知県で開催された「患者の権利宣言25周年記念シンポジウム」の記録集です。この中で、「ハンセン病問題に関する検証会議の提言に基づく再発防止検討会」の座長代理を勤めていらっしゃる九州大学大学院法学研究院教授の内田博文氏が、「医事法におけるパラダイムの転換―国策に奉仕する医療から国民の命を守る医療へー」と題して、素晴らしい講演をされています。

 以下に、内田氏の言葉を引用しつつ、特に印象に残ったポイントを紹介します。

【日本医師会や現行法は遅れている】
 内田氏によると、現在、患者の権利章典として注目されているのは、アメリカ病院協会が1973年に採択した「患者の権利章典」と、1981年9月10日の第34回世界医師会総会で採択された「患者の権利に関するリスボン宣言」です。

 リスボン宣言の序文では、次のように謳われています。「法律、政府の措置、あるいは他のいかなる行政や慣例であろうとも、患者の権利を否定する場合には、医師は、この権利を保障ないし回復させる適切な手段を講じるべきである」。

 この「リスボン宣言」と、2004年の日本医師会「職業倫理指針」の間には、重要な相違が見られる、と内田氏は指摘します。後者は、医師の患者に対する責務という観点から定められているために、「『リスボン宣言』が謳うような『患者の権利』についての重要な諸規定が欠落している」のです。その半面、医療従事者の責務については、医療法や医師法などで詳細に規定されています。

著者プロフィール

本田宏(済生会栗橋病院院長補佐)●ほんだ ひろし氏。1979年弘前大卒後、同大学第1外科。東京女子医大腎臓病総合医療センター外科を経て、89年済生会栗橋病院(埼玉県)外科部長、01年同院副院長。11年7月より現職。

連載の紹介

本田宏の「勤務医よ、闘え!」
深刻化する医師不足、疲弊する勤務医、増大する医療ニーズ—。医療の現場をよく知らない人々が医療政策を決めていいのか?医療再建のため、最前線の勤務医自らが考え、声を上げていく上での情報共有の場を作ります。

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