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日本にPA(フィジシャン・アシスタント)の導入を!

2010/06/30

 6月5日(土)の午後に開催された、埼玉県外科医会第26回救急シンポジウムで、 「米国Physician Assistant制度の実態―患者・ジャーナリストとしての経験取材から―」と題された講演を聞いてきました。演者は、NHKの健康科学番組を制作しているディレクターの遠藤玲奈氏です。

 フィジシャン・アシスタントPA)とは、医師の監督の下、医療チームの一員として診断・治療を含む医療行為を行う医療専門職で、医師の業務を支援する役割を担っています。日本には存在しない職種ですが、世界7カ国(米国、イギリス、カナダ、オーストラリア、台湾、オランダ、南アフリカ)で導入されていて、米国の医療現場では、現在8万人ほどのPAが働いています。

 肺の難病であるリンパ脈管筋腫症を抱える遠藤氏は、日米の病院で治療を受けた経験をきっかけに、PAについて大学院で研究され、日本の医療界に対して精力的にPAの重要性を訴えています。 

 この日の遠藤氏の講演では、米国の教育病院の1つであるスタンフォード大の移植外科でのPAの業務が紹介されていました。同科では、5人の常勤医、2人のPA、そしてフェロー2人とレジデント2人でチームが構成されています。通常、回診はPAとフェロー&レジデントが別々に行い、常勤医が統括しています。PAは、レジデントやフェローの教育係でもあります。

 日本では医師がすべて行っている術前検査、術前サマリ、手術説明同意書、退院サマリの作成などは、PAとレジデントの仕事です。常勤医の仕事はそれぞれの確認と最終決定で、このほかに研究学会活動や企業・行政との連携、若手の教育、病院経営などに当たっています。

 PAの業務範囲は、病院あるいは医師との合意の上で決めることが可能となっており、PAは当直も担当し、患者の窓口となって担当医のように働いています。そのためか、PAの待遇はかなり良く、新卒PAでも年収600~700万円程度を得られるそうです。

 遠藤氏が紹介した米国のPA 認定国家委員会が製作したビデオの中で、米国医師は以下のようにコメントしていました。

 「医師がPAと働くのは、幅広い医療サービスを提供するために必要なこと。医師は致命的な部分をしっかりと把握して対処し、それ以外の手が回らない部分はPAに依頼する。PAと医師がパートナーシップを築くことで、我々は自分達の能力・業務範囲を拡大し、質の良い医療を実現できる」。

 また、米国で、患者としてPAによる医療行為を受けた経験を持つ遠藤氏も、「PAは朝早くからレジデントと共に回診し、いつも丁寧に対応してくれた。自分の疑問に対して文献検索までしてくれて、常に心の支えになってくれた」と述懐します。

著者プロフィール

本田宏(済生会栗橋病院院長補佐)●ほんだ ひろし氏。1979年弘前大卒後、同大学第1外科。東京女子医大腎臓病総合医療センター外科を経て、89年済生会栗橋病院(埼玉県)外科部長、01年同院副院長。11年7月より現職。

連載の紹介

本田宏の「勤務医よ、闘え!」
深刻化する医師不足、疲弊する勤務医、増大する医療ニーズ—。医療の現場をよく知らない人々が医療政策を決めていいのか?医療再建のため、最前線の勤務医自らが考え、声を上げていく上での情報共有の場を作ります。

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