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「医学部新設反対」なら建設的対案を示すべき

2010/04/05

 このブログでも繰り返し訴えてきましたが、日本の医療体制が崩壊した理由は、低医療費政策と医師不足です。情けない話ですが、現場の医療スタッフは最新の医療に追い付いていくのが精一杯で、とても患者さんが望むような、十分に納得のいく説明や心のケアにまで手が回らないのが現状です。

 そのような状況の中、やっと医学部新設の動きが出てきました。2010年2月21日の朝日新聞朝刊は、「医学部新設、申請へ 3私大が準備 認可なら79年以来」との見出しで、こうした動きを報道しました。記事には、「医師不足が言われるなか、国内の三つの私立大学が医学部新設を目指し、準備を進めていることが分かった。設置認可を国に申請する手続きのため、すでに学内に検討組織を立ち上げた大学もある。医学部新設は30年以上なく、認可されれば1979年以来となる」とありました。

 しかし、こうした動きに対して、日本医師会や、医師を養成する立場の全国医学部長病院長会議が、早々に反対の意向を表明しました。全国医学部長病院長会が2月19日に民主党などに提出した要望書によると、その反対理由は

 (1)質を担保した医学部運営には相当数の臨床教員が必要で、医学部の新設や急激な定員増を行うと、地域医療の中核として働く勤務医を臨床教員として招くことになり、医師不足が加速する。

 (2)医師養成数を1.5倍にすると、学生が入学後卒業する年の6年後にはOECD平均(人口10万人当たり300人)に達し、その後10年を待たずに人口10万人当たり400人という「世界一」の水準になる。医師増を達成した後は、定員を減らす必要があるが、設備投資に莫大な資金を投入し、教育者を雇用した後の削減は容易ではない。

 ―などです。要望書の結びには「医学部増設には百害あって一利なし」という強い言い回しもありました。

 私も現在の大学のマンパワー不足は十分に認識していますから、全国医学部長病院長会議が(1)の理由で反対することについては、否定するつもりはありません。むしろ現在の医学部には十分な国のバックアップが必要であることを繰り返し訴えていきたいと思っています。

 しかし、(2)の「医師養成数を1.5倍にすると学生卒業の6年後にはOECD平均に達し、その後10年を待たずに世界一の水準になる」という分析には納得できません。要望書にはこの推計の根拠や、どの程度の期間をかけて1.5倍を達成するのかといった前提条件も示されていません。

著者プロフィール

本田宏(済生会栗橋病院院長補佐)●ほんだ ひろし氏。1979年弘前大卒後、同大学第1外科。東京女子医大腎臓病総合医療センター外科を経て、89年済生会栗橋病院(埼玉県)外科部長、01年同院副院長。11年7月より現職。

連載の紹介

本田宏の「勤務医よ、闘え!」
深刻化する医師不足、疲弊する勤務医、増大する医療ニーズ—。医療の現場をよく知らない人々が医療政策を決めていいのか?医療再建のため、最前線の勤務医自らが考え、声を上げていく上での情報共有の場を作ります。

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