
「痩せ細る 我が身捨てても 民思う」― 病床でインタビューに応えていただいた高岡先生と
私に「医療費亡国論」の存在と、それが日本の医療に多大な影響を与えたことを教えてくださったのは、元長崎大学教授の高岡善人先生です(2006.10.3 「医療費亡国論は保険局長の“私の考え方”」)。その高岡先生が、7月12日午前5時58分、ご自宅にてご家族に囲まれて安らかに逝去されました。生前からの高岡先生のご意志で、告別式は近親者のみで執り行われたそうです。
高岡先生には、私の2冊目となる著書『医療崩壊はこうすれば防げる!』のインタビューのために、約3カ月前に病床でお会いしていました。7月7日に出版にこぎつけることができた『医療崩壊はこうすれば防げる!』を手にしていただいて間もないご逝去でした。
私にとって、高岡先生はまさに「医療制度の師」です。今回、ご遺族のお許しをいただきましたので、高岡先生と私の出会いなどについて書いてみたいと思います。
私が高岡先生に出会うことになったきっかけは、2006年2月15日、私の勤務先に届いた一通のファクシミリでした。以下にほぼ全文を紹介します。
済生会栗橋病院 本田 宏 副院長殿
平成18年2月15日
昨日はバレンタインデイで、私が女性だったらチョコレイトをお贈りするところです。平成13年12月のメールで拙著「病院が消える」を探されて、長崎の○○先生から連絡をいただいた高岡です。
先生の朝日新聞投稿を含めて、日本医療に危機感を持っておられることに深甚の敬意を持っています。来る3月16日朝日ホールでのポストコングレス公開シンポのパネリストに先生が選ばれたのは大変良いチャンスだとお慶び申し上げます。基調講演のタイトルがまた凄くよいと確信していますので、東大三内の後輩○○学長にもこの感想を送りました。○○名誉教授は○○医大教授時代、医療について一度懇談しました。
また拙著発刊以来、三大新聞の医療担当記者とご縁ができましたが、○○君とはFAX交信のみの間柄です。その他国立○○センター○○氏、○○大学病院長、前○○総長、○○教授、○○日本医師会副会長等々、私がいままで交信した多数の医師の中でも、先生こそ稀に見る、勇気ある、歯切れのよい論客と推察しております。
それで、このチャンスに先生が拙宅で、愚見と医療資料、経験談をお聞きくださるようなご縁がございましたら、私は喜んで医療に対する90歳の遺言を申し上げたい気持ちを持っています。いかがでしょうか。拙宅は有楽町線で○○駅の近くです。ご返事はファクスでも結構ですが、電話なら夜8時頃が一番茶の間の在宅と思います。
ご多忙の先生のこと、決してご無理を申し上げるつもりはございません。何分のご返事をお願いいたします。
ご自愛の上益々のご活躍をお祈り申し上げます。
敬具
長崎大学名誉教授 高岡善人