
デンマークの医療介護制度について講演していただいた小島ブンコード孝子さん
第49回医療制度研究会が7月12日(土)、北里研究所病院で開催されました。今回のテーマは、デンマークの医療介護制度で、演者はユーロ・ジャパン・コミュニケーション代表の小島ブンコード孝子さんでした。私は、今回の講演を以前より大変に楽しみにしていました。
その理由は、週刊医学界新聞の『「小さな政府」が亡ぼす日本の医療(8)、2008.5.19』で、李啓充氏がオランダの医療・福祉制度について紹介した記事を読んでいたからです。
この記事で李氏は、デンマークの国民負担率はOECD加盟国1位(72.5%)なのに、英国レスター大学が行った幸福度調査で世界第1位(日本88位)であったこと、そしてそれを報道した現地のテレビ番組でデンマークの若者が「税金は少し高いけれども、医療費も大学の授業料も無料だし、有給休暇も最低年5週。何も不満はない」とコメントしたことを紹介していました。世界一国民負担率が高いのに幸福度世界一?――果たしてそれは事実なのか、実情を知りたいと思っていたのです。
今回の講演の詳細は、後日、医療制度研究会のホームページ(こちら)にアップされる予定ですが、以下に私が特に印象に残った部分をご紹介します。
私(小島ブンコード孝子氏)は東京で生まれ、学習院大英文科卒業後にデンマーク人と結婚し、デンマークで35年間、暮らしている。今回は1カ月半の帰国で、全国各地で講演をしている。この医療制度研究会の講演が、今回の帰国での最後の講演だ。今回、帰国して、日本国内で特に介護問題について関心が高かったことに驚いている。
デンマークでは女性は皆働いている。私も当初は、日本語という言葉を介した仕事をしていたが、いくら通訳をしていても、100ボルトの日本の社会から220ボルトのデンマークを見ても表面的なことだけしか理解されないことに気付いた。やはり両国の意識の違いを伝えることが必要だと感じるようになった。
「ひと」を大切にするデンマーク
さて、まずはデンマークの特徴を挙げてみよう。
・小さくて大きな国、面積は北海道の半分、人口はたった547万人
・平坦な土地と社会
・福祉先進国
・国民1人当たりのGNPは世界6位
・幸福度世界一
デンマークでは、「国にとって最も大切なものは『ひと』である」とされている。この観点から、
・人的資源のレベルアップ:教育は国最大の投資
・人的資源のフル活用:男女参画(実は男女参画に相当する言葉はデンマークにはない。男女両者が働くのは当然だから)、ダイナミックな労働市場、良い労働環境作り
・人的資源を大切にする:公共福祉・医療の整備
という方針の下、高度な公共サービスが提供されている。
高度な公共サービスを提供するためには、財源が必要だ。では、デンマークは財源をどのように確保しているのか。主な歳入を見ると、
・所得税:国税+地方税 平均50%
・法人税:28%
・付加価値税(≒日本の消費税に当たる、教育のみ課税なし):25%
・消費税:タバコ、アルコール、自動車などへの特別税
一方、公共サービスに関する歳出は、
・教育:基本的に無料
・医療:基本的に無料 薬代の一部が個人負担
・福祉:大半の経費を国と市が負担
・国民年金:現在は65歳以上、今後徐々に年齢を引き上げ