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外科医に未来はあるのか

2008/06/26

 先日、政府内で医師増員の方向性が決定した、という報道をご紹介しましたが、私のブログにも現場から賛成・反対両方の立場からのご意見をいただきました。

 確かに、少し前まで「医師の絶対数不足は偏在が問題」とされていたように、それぞれの施設や地域によって、医師不足をそれほど深刻に感じないことがあるのも、また日本の実態だと思います。しかし、今年になって全国からの講演依頼がむしろ増加し、各地域で医師不足を根本原因とする医療崩壊の実態を見ている私は、「日本の医師不足の原因は偏在ではなく、絶対数不足だ」と断固主張します。

 せっかく決まった医師増員路線ですが、早くも増員は最小限に抑えよう、という動きが水面下に出ていることも仄聞しています。これからも医療崩壊を食い止めるために、実効性ある医師増員を粘り強く訴えていきたいと思っています。

 さて今回は、千葉県浦安市の東京ベイホテル東急で6月12日に開催された第33回日本外科系連合学会の共通シンポジウム2「外科医不足の原因と対策」に参加してきたことをご報告します。

 今回の学会長は、埼玉医科大学国際医療センター消化器外科の小山勇教授で、学会の主題は「将来を支える外科医の育成」です。そして同シンポは、厚生労働省医政局指導課長の佐藤敏信氏、そして私が基調講演を、その後に各方面から6人の演者が発表するというものでした。

 以下に私が印象に残った発言をご紹介します。(敬称略)

佐藤敏信 (厚生労働省医政局指導課長)

 私は昭和58年3月に山口大学医学部卒業した。今、厚労省はかなり厳しい立場に置かれているが、今日の話を一言で言うと「水に落ちた犬の遠吠え」と表現できるかもしれない。現在の日本の医療に問題が山積していることは承知しているが、現場でできることを考えないで、グローバルスタンダードと比較しているだけでは、思考停止になってしまう。

 私は、現在の多くの医療問題は、医療に対するニーズが変化したことが大きな原因だと考えている。コンビニ受診に代表されるように、救急車出動数がこの10年間で51%増加しているが、その増加は成人の軽症と高齢者の軽症、中等症の患者だ。医療事故報道の影響も大きい。昔なら許容されたようなものまで医療事故と見なされるようになった。

 このように量と質の大きな変化が発生した上に、医師のやりがいの低下(給与、謝礼、バイト禁止など)、女性医師の増加、新医師臨床研修制度の導入、団塊世代の医師の定年、名義貸し問題、大学院重点化など研究重視、といった様々な要因がある。この結果、医師数は確実に増えているにもかかわらず、産科、外科は減少している、という事態が生じている。

 さらに病院側の責任もある。年功序列給与体系を見直さず、魅力ある職場・研修の場作りに努力してきたのか。以前は、病院の院長は医師リクルート(大学への窓口)、事務長は赤字補填(予算獲得)が大きな仕事だったが、自治体の財政赤字もあり、それもままならなくなった。

 さあ、これからどうするか。今後は、病院の収益を個々の医師に還元する仕組み作りが必要だろう。また医師の労働の評価をどうするか。結果平等、年功序列型はやめた方がいいだろう。こういった努力は、総医療費抑制策とは直接関係ないので、国に頼らなくても各医療機関でできるはずだ。

 医師の偏在に関しては、診療科別、地域別の適正医師数などを厚労省が提言する必要があるかも知れないが、舛添大臣の考えでそれは難しいだろう。

著者プロフィール

本田宏(済生会栗橋病院院長補佐)●ほんだ ひろし氏。1979年弘前大卒後、同大学第1外科。東京女子医大腎臓病総合医療センター外科を経て、89年済生会栗橋病院(埼玉県)外科部長、01年同院副院長。11年7月より現職。

連載の紹介

本田宏の「勤務医よ、闘え!」
深刻化する医師不足、疲弊する勤務医、増大する医療ニーズ—。医療の現場をよく知らない人々が医療政策を決めていいのか?医療再建のため、最前線の勤務医自らが考え、声を上げていく上での情報共有の場を作ります。

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