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日本の医療を救う、三つの処方せん

2007/08/20

 前回は私が日本病院会のセミナーで講演させていただいたことを紹介いたしましたが、実はそこで、まさに“目から鱗”の素晴らしい講演に出会いました。今回はその講演について報告させていただきます。

 演者は新潟大学脳研究所統合脳機能研究センター長で教授の中田力氏でした。中田氏は日本学術会議連携会員で、長らくカリフォルニア大学教授として米国の臨床医療現場で活躍されてきた方です。当日のレジュメの自己紹介でも「専門:臨床医学」と書かれており、この一点だけでも中田氏のお人柄がしのばれます。

 講演の冒頭で中田氏は、「日本でよく米国の医療が紹介されるが、ほとんどが表面的なもので、残念だ。米国の医療は、それなりの長い歴史の結果であり、日本でそれをそのまま導入することが、いかに危険なことであるか」と強調されたのが印象的でした。

 また米国医療の原点には、日本ではあまり知られていない1910年発表のFlexner report(Abraham Flexner;1866-1959)があり、その基本は「いかにして良い臨床医を作るか」だ、と話されました。「良い臨床医さえ育てれば、おのずと医療はきちんとしたものになる。医療制度の根幹を作為的に検討しなくても、良き臨床医を作る制度さえ確立すれば、すべては自然にでき上がる」という思想であるのです。
(学術の動向6:「自己形成するアメリカ医療」 中田 力 学術の動向 2007.5

 そして中田氏は、今、日本の医療崩壊を食い止めるためには、以下の3点が重要だと指摘しました。
1)医者になりたい人を医者にする(motivation):医学部を4年制とし4年制大学卒業予定者が受験する
2)信頼ある医療を提供する(accountability):適切な卒後臨床研修制度を確立する
3)納得できる医療とする(quality assurance):評価ではなく品質保証を行う

 以前に米国の医学教育について、木村健先生の講演を紹介しました。私は日本は米国の医学教育に学ぶべきことが多いと認識してはいましたが、なぜ米国ではこのように充実した医学教育体制ができたかについては、今ひとつ不思議で仕方がなかったのです。しかし今回の中田先生の講演をお聞きして、胸のつかえが下りました。

著者プロフィール

本田宏(済生会栗橋病院院長補佐)●ほんだ ひろし氏。1979年弘前大卒後、同大学第1外科。東京女子医大腎臓病総合医療センター外科を経て、89年済生会栗橋病院(埼玉県)外科部長、01年同院副院長。11年7月より現職。

連載の紹介

本田宏の「勤務医よ、闘え!」
深刻化する医師不足、疲弊する勤務医、増大する医療ニーズ—。医療の現場をよく知らない人々が医療政策を決めていいのか?医療再建のため、最前線の勤務医自らが考え、声を上げていく上での情報共有の場を作ります。

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