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研修医の診療は報酬なし、だがその後は?

2007/06/13

 今回は、米国の卒後研修をめぐる最終回として、研修医の給与や待遇について、考えてみたいと思います。米アイオワ大医学部名誉教授の木村健先生の講演から、米国における研修医の給与や待遇について紹介します。


卒後研修の費用は国が負担、研修医の診療は報酬なし
 研修医は、身分は医師だが、診療報酬を受け取ることはできない。これは厳格なルールだ。ミネソタ大学の事件を紹介しよう。FBIの調査で、研修医が行った診療の10%の症例について、同大学の病院が診療報酬を受け取ったことが分かり、100億円の賠償金を請求された。大学はそれを払えないので、保険会社に身売りしなければならなかった。

 研修医をアルバイトで雇っても診療報酬請求ができないので、研修医のアルバイトは存在しない。国から研修医1人当たり年間10万ドルが支給され、うち4万ドルが固定給として研修医に支払われる。残りの6万ドルのうち、かなりの部分が指導医の給与補填に当てられる。本人の保険や設備費などにも使われている。

 しかし、研修医が「これはカルテルではないか」と訴えを提起し、訴訟になっている。研修医側が勝訴すれば、1人の研修医にかかる費用が一気に年間10万ドル以上になる可能性がある。現実問題として、もし病院の取り分が減ると、病院の経営は破たんしてしまう。指導医に給与を支給しなければ、指導する人がいなくなってしまうのが米国であり、一例ごとに手術料金を受け取ることができるから、がんばって手術をする。つまり、米国は「金を使って良い医者を作る」というスタンスで、日本の厚生労働省とは全く違う。

研修を終了しなければ“ただの人”
 研修を終了すると、開業するか、大学に残るかの選択をする。開業すると、当初から30万ドル程度を稼ぐ人が多い。大学勤務医の収入(平均)は、助手10.8万ドル、講師16.5万ドル、準教授22.5万ドル、教授24.1万ドル、主任教授36.3万ドルだ。

 つらい研修に耐えられるのには訳がある。なぜなら、研修を終了しなければ“ただの人”で、いくら診療行為を行っても一文にもならない。一方で、高度なスキルを身に付ければ高値で売れるという現実があるからだ。

 よりよい病院への異動や、手術点数も医師の“言い値”だ。例えば、両側ヘルニアで外科医が受け取る手術料は3800ドル(日本ではヘルニアは片方で6160点)、駆け出しの医師でも虫垂切除術で2000ドル(日本では6420点)。手術料金としては日本は米国の3分の1で、それも全額が医師の収入になるわけではない。

 米国では、外科医は手術収入からスタッフの給料や外来や手術室使用量(時間に応じて)などを支払うシステムになっている。これが医師と病院が分業されている米国の違いだ。つまり一人ひとりのスタッフが、開業医と同じ気持で働いている。患者側から見れば、医師と病院両方に支払いをしていることになる。

 患者は初診料金、麻酔科、手術料、回診(一回:100ドル)と請求される。だから医師は、複数の病院をかけ持ちして回診すると、それだけの収入になる。専門医になれば、これらの収入によって、銀行から学費を借りていても2~3年で返済することができる。だから、裕福な家の姉弟でなくても医師になることができる。

日本の医療費は先進国で最下位
 「費用」「アクセス」「質」の3つを同時に実現することは不可能とされる。どこかで折り合いを付けなければならないが、日本は「アクセス」だけしか実現されていないと感じる。医療費のGDPに対する割合は米国13.4に対して7.6である。先進9カ国では日本は最下位だ。誰かが小泉首相(当時)の首に鈴を付けなければならないのではないか。

著者プロフィール

本田宏(済生会栗橋病院院長補佐)●ほんだ ひろし氏。1979年弘前大卒後、同大学第1外科。東京女子医大腎臓病総合医療センター外科を経て、89年済生会栗橋病院(埼玉県)外科部長、01年同院副院長。11年7月より現職。

連載の紹介

本田宏の「勤務医よ、闘え!」
深刻化する医師不足、疲弊する勤務医、増大する医療ニーズ—。医療の現場をよく知らない人々が医療政策を決めていいのか?医療再建のため、最前線の勤務医自らが考え、声を上げていく上での情報共有の場を作ります。

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