日経メディカルのロゴ画像

医師研修の目的はどこにあるのか

2007/06/06

 医師の卒後研修の目的は、どこにあるのでしょうか。この問題を議論するための参考として、前回に引き続き、米アイオワ大医学部名誉教授の木村健先生の講演から、米国における医師研修の目的について紹介します。

研修施設は毎年、研修認定評議会の評価を受ける
 研修の目的は単純明解である。例えば、心臓外科医が研修過程を終えれば、単独でバイパス手術が可能な医師である、という意味である。修業期間は、科によって異なるが(麻酔科4年、外科5年など)、かなりの経験を積まなければならない。

 外科を例に取れば、研修認定評議会の下に研修認定委員会という組織があり、毎年、研修施設の評価をしている。この委員会は、医師会、外科学会、外科専門医認定委員会からなる。ここから専門のスタッフが各研修施設に派遣され、認定項目に沿ってデータを収集し、それに基づいて委員会が認定する。評価に耐えられない施設は認定を取り消される。

 評価のキーポイントは、主任指導医の評価で、経験年数、能力、資質、在任期間、医師免許、専門医資格などが審査されるが、実力があると認定されれば資格にはこだわらない。私(注:木村先生)も専門医資格はなかったが、主任指導医になれた。主任指導医の任務は研修記録作成および保管、他の指導医の任命、研修医の心身のケアなどである。

外科の研修医は年間100例の執刀をこなす
 研修では、臨床だけではなく基礎医学教育も毎日のように行われる。外科の系統講義、総論から各論の講義がある。年間40~50時間が費やされる。

 外科の研修施設は米国全体で256施設だ。人口当たり100万人に1施設であり、この割合を日本に用いれば、120~130施設でよいことになる。外科の研修医は、1人で1年に100例の執刀をこなさなければならない。例えば、ある施設で毎年6人の研修医を採用するということは、5年間在籍するので、常に30人の研修医がいることになり、その施設は年に3000例以上の一般外科手術をこなすことが求められる。

 血管外科、胸部外科、小児外科などは、一般外科の研修の5年を終了してから、さらに2年間研修をしなければならない。症例数が少ないこれらの科では、毎年、新たな研修医が加わると症例が足りないので、1年おきに新人を採用することになる。症例が多い胸部外科などは、最近は養成過剰気味である。

 手術数が少ないことは、飛ばないパイロットと同じで質が保たれないが、多すぎても問題で、1人150例以上になると研修施設としては認められない。

 専門医になった後も、1年間に最低200例執刀しないと、専門医として認められなくなる。たまに飛ぶパイロットは信用できないという発想。それに比較すると、日本の教授は手術をしていない人が多くてびっくりする。米国であれば、外科の専門医でなくなってしまう。

 アイオワ大学では例年5人の外科研修医を採用する。これには2500例の一般外科手術が必要である。だいたい600人ぐらいの応募があり、書類選考で100人にまで絞った後、面接が行われる。面接試験には教授だけでなく、レジデント、患者も評価側に入る。面接の結果で順位を付けて採用する。

 学生は複数の施設の試験を受けているので、結果的に5人採用できないこともあるが、そのときには下位の学生を採用する。定員を満たさない施設は、足りないまま研修を始めると、次の年には定数を減らさなければならないため、なんとかして人員を確保する。日本人も含め、外国人にとっては、これがチャンスとなる。

著者プロフィール

本田宏(済生会栗橋病院院長補佐)●ほんだ ひろし氏。1979年弘前大卒後、同大学第1外科。東京女子医大腎臓病総合医療センター外科を経て、89年済生会栗橋病院(埼玉県)外科部長、01年同院副院長。11年7月より現職。

連載の紹介

本田宏の「勤務医よ、闘え!」
深刻化する医師不足、疲弊する勤務医、増大する医療ニーズ—。医療の現場をよく知らない人々が医療政策を決めていいのか?医療再建のため、最前線の勤務医自らが考え、声を上げていく上での情報共有の場を作ります。

この記事を読んでいる人におすすめ