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抗癌剤と免疫関連細胞と「母の強さ」

2007/03/23

これは先週から飛岡内科の待合室に飾っている桜。昨年4月にこのブログを始めたころには、まだ桜が散り残っていた。1年が経つのは早いものである。

 勤務医時代、癌治療の専門医の指導のもと、「抗癌剤治療」をしているころから、根本的に、抗癌剤治療は間違っているのではないか?と感じていた。そのころの癌治療の理念は「癌を完全に治す:除去する」というもので、抗癌剤「シスプラチン」などを大量に使っていた時代であった。最近は治療法が進歩し、理念も「癌と共存する」へと方向転換が行われ、5年以上生存する進行癌も経験するようになった。抗癌剤治療は、患者にとって、辛い、不快感を伴う治療である。しかし、ほかの選択肢がなければ避けて通れない治療法であることも事実である。

 私の持論であり、偏見である。

 発癌のメカニズムを考えるとき、生命体には、進化するための仕組みとして、突然変異を起こし易いようなシステムがあり、より環境に適合できるよう、速度を上げて、種の優位性を保とうとしているのではないか?と想像している。この裏返しの結果として、突然変異の蓄積により発癌するのではないか? と勝手に想像しているのである。

 免疫力は、生命力豊かな「思春期」「青年期」を越えると次第に低下していく。この免疫力とは、自己と自己以外(非自己)を認識する能力である。発癌という現象は、ある一定の確率で発生しており、免疫システムが非自己(癌細胞)を排除していると想像している。最近では「抑制T細胞」(抑制T型リンパ球)の存在とその役割が確認でき始めており、自己・非自己に関与していることが明らかに成りつつある。

 私は、加齢とともに免疫システムの能力が低下するため、癌細胞を排除できなくなり発癌するのだと考えている。人間は100年前までは、20歳までに子供を作り、40歳ころには死んでいた。だから、免疫力も40歳まで確保できればよく、それ以降はオマケなのかも知れない。

 癌関連の学会では「発癌は(幹細胞レベルで)遺伝子のトラブル(変異)の蓄積により、最終的に発癌という現象が起こる」との考えが主流になりつつある。従って、私の意見は、偏見以外の何ものでもないと思う。しかし、臨床医として患者を診ていると自分の偏見に固執してしまうし、発癌抑制メカニズムは複数存在している、と考えた方が自然だと思う。

著者プロフィール

飛岡宏(飛岡内科医院副院長)●ひおか ひろし氏。1980年川崎医大卒後、岡山大第2内科入局。岡山労災病院、新居浜十全病院、岡山市立市民病院を経て、90年9月より飛岡内科を継承開業、副院長として現在に至る。

連載の紹介

飛岡宏の「開業医身辺雑記」
「コンピューターと医療の世界を結び付ける」ことをライフワークとする飛岡氏。日々の診療を通じて感じる開業医の喜びや悩み、実感する現代医療の問題点などを、肩の凝らないエッセイ風につづります。

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