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ゲテモノ食い自慢?

2007/02/20

イタリア半島の“かかと”に位置する、世界遺産登録のアルベロベッロ(イタリア語で「美しい木」の意)の街角の風景。とんがり屋根の平屋建てが連なっている。洗濯物を干すときは、はしごで屋根に上るようだ。

 前回、図らずも「ゲテモノ喰い」であることを告白してしまった。成り行きでゲテモノ喰いの話を続けよう。

 中国料理では一般的には生食は行わず、「中国料理は炎の料理」(http://www.sotetsu-group.co.jp/kawaraban/105/honoo.htm)に書かれているように加熱料理を行っている。

 これに対し、日本料理の特徴は「生食」である。和食の生食は「刺身」に代表される「生き作り」である。料理された魚が生きており、口をパクパク動かしていることがある。中には「白魚のおどり」(生きている白魚にお酒をかけ、暴れている状態で食べる)まである。動物保護団体からクレームが出そうな食べ方である。

 牡蠣を生食するのは当たり前。西洋では化け物の代表格である「蛸」も刺身で食べてしまう。世界の8割の蛸を日本人が食べると聞く。蛸は生きた状態で塩揉みをしてヌメリを取り、一晩寝かせて刺身にする。おどりで食べるのであれば、スプーンで吸盤を切り出して食べる。これは歯応えがあり、コリコリして美味しい。また、その昔は冷凍・保冷技術が未熟だったため生食できなかった「蟹」も生食が当たり前になっている。

 日本人は、海の幸だけを生食するのではなく、四足動物も生食する。「牛肉の刺身」「馬肉(さくら)の刺身」は当たり前。その昔、火を充分通してから食べるものとされていた(過去形である)豚肉も、生に近い状態で食べることがある。

 豚肉が生食には向かないとされる理由は有鉤条虫がいるから、と寄生虫学で学んだ。条虫(サナダムシ)には「有鉤条虫」(豚肉から感染)と「無鉤条虫」(牛肉から感染)があり、鉤(フック)がない無鉤条虫は簡単に駆除できるが、有鉤条虫は駆除が難しく、幼虫が皮下に寄生すると指先大の瘤(こぶ)ができて、一目瞭然である。広東省でインフルエンザの変異が繰り返されていることは有名で、豚・鶏・人の共通感染症があり、こんなことも、豚肉や鶏肉が生食されてこなかった理由である。

 現代日本の養豚現場では、豚の健康管理は十分行われており、精肉段階で寄生虫チェックもされているので、今の豚肉は生食できる。BSE問題もあり、最近では「豚シャブ」(火が通り切らない生煮え状態で食べる)も一般化してきている。世界広しと言えども、一般的に豚肉を生食しているのは、日本だけではないか?と考えられる。鶏肉に関しても同様な状態であるが、鳥インフルエンザ(H5N1)問題もあり、生食は避けたいところである。

著者プロフィール

飛岡宏(飛岡内科医院副院長)●ひおか ひろし氏。1980年川崎医大卒後、岡山大第2内科入局。岡山労災病院、新居浜十全病院、岡山市立市民病院を経て、90年9月より飛岡内科を継承開業、副院長として現在に至る。

連載の紹介

飛岡宏の「開業医身辺雑記」
「コンピューターと医療の世界を結び付ける」ことをライフワークとする飛岡氏。日々の診療を通じて感じる開業医の喜びや悩み、実感する現代医療の問題点などを、肩の凝らないエッセイ風につづります。

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