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医療もゲテモノ喰いも支える「薬の力」

2007/02/13

院長・飛岡隆が、南イタリアを旅行中に、おそらくナポリ辺りの広場で出合った、踊りの輪。衣装や楽器などから、民俗舞踊のタランテッラ(毒蜘蛛踊り)であろう。

 私の学生時代(30年前)、日本人には民族的に、胃癌が多く、大腸癌と糖尿病は少ない、とされていた。そして、米国では「カリニ肺炎」が問題になっているとも授業で教えられた記憶がある。これは今ではHIV感染症として知られている。現代の常識からは、かけ離れたことだが、それだけ医学・医療の進歩が早いことを意味している。

 私の医師歴25年の中で、革命的であると感じた薬を2つ上げてみよう。もちろん、この2つだけではないが、製薬会社の新薬開発により、日本の医療が大きく変化したことが実感できる。

◆タガメット(H2ブロッカー
 私が医師になったころに発売された薬である。学生時代、外科の授業で「胃切除の適用」は、(1)出血性胃潰瘍、(2)難治性胃潰瘍、(3)胃潰瘍穿孔、(4)胃癌、とされていた。医師になりたてのころは、上記4つに当てはまる患者さんがたくさんいて、外科へ送った記憶がある。それが、タガメットを使うようになってから様相が変わり、胃潰瘍は内科で確実に治す疾患になり、胃潰瘍穿孔も経験しなくなった。その結果、私が開業するころ(18年前)には胃癌以外では胃切除を行わなくなった。

 過去の医療では、「癌告知」を巡って色々な議論があったが、日本人に多い胃癌を皮切りに、今では癌告知は普通のことになっている。癌告知ができない時代は、抗癌剤治療を行う場合には、患者さんに何かの嘘の説明をすることになる。その結果、患者さんが主治医を信用できなくなり、医師・患者関係が危うくなる。お互いに本音で話ができることが、信頼関係の維持には重要である。

 私の診ている高齢女性の一人に、過去に脳卒中を発症し、胃癌・大腸癌・乳癌を外科で切除して満身創痍ではあるが、今でも元気に生きている方がいる。最初の胃癌の癌告知には、少し気を使ったが、大腸癌以降は気楽なもので「大腸癌です。外科へお願いします」「これは乳癌です」で済んでいる。これも、優秀な外科医が存在しているから楽勝なのである。知り合いの外科医の先生方に感謝したい。

著者プロフィール

飛岡宏(飛岡内科医院副院長)●ひおか ひろし氏。1980年川崎医大卒後、岡山大第2内科入局。岡山労災病院、新居浜十全病院、岡山市立市民病院を経て、90年9月より飛岡内科を継承開業、副院長として現在に至る。

連載の紹介

飛岡宏の「開業医身辺雑記」
「コンピューターと医療の世界を結び付ける」ことをライフワークとする飛岡氏。日々の診療を通じて感じる開業医の喜びや悩み、実感する現代医療の問題点などを、肩の凝らないエッセイ風につづります。

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