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医療現場は“煮詰まって”いる

2007/01/24

院長・飛岡隆のイタリア旅行での1シーン、ナポリ港の夕日。イタリアのことわざに「ナポリを見てから死ね」とあるように、ナポリ湾一帯は風光明媚な土地として知られる。

 今回から2回にわたり、「開業医の芝が青く見える」理由、背景についての私見を述べることにする。

 本田宏先生、コメント、ありがとうございました。そのコメントへのお答えになるかどうか……。

 私は「今の医療現場は『煮詰まっている』(*注参照)」と感じている。煮詰まってしまって「開業医・勤務医・外来患者・入院患者の距離感」が狂ってしまい、ギクシャクしていると考える。これに、団塊世代の大好きな「病院(専門医)ランキング」が追い打ちをかけて、医師・患者関係を狂わせている。だから、何らかの方法で、煮詰まった部分を薄めてやる必要がある。

 そもそも、患者さんは「かかりつけ医(一般医)とは信頼関係」「勤務医(専門医)とは契約関係」と割り切って、付き合っているのであろうか? 少なくとも、岡山という地方都市での「かかりつけ医と患者の関係」は、信頼関係を基盤に成り立っていると思う。その一方で、岡山でも「岡山医療ガイド 2006(活躍する専門医250人)」(山陽新聞社)という、岡山県下の専門医を紹介した本が売れている。

 現在の医療では、医療機関(病院・診療所)全体に対して、労働(医療)単価が引き下げられているにもかかわらず、労働(医療)の質を高めることが要求されている。もちろん、過去の医療が手抜きをしていたわけではなく、社会の形態が「信頼型社会」から「契約型社会」に変わってきたことの表れだ。

 この結果、本田先生の言うように、医療現場でも、契約確認作業(インフォームドコンセント)が重要事項になった。「医療提供者の説明責任重視」に「患者の権利意識向上」が加わって、勤務医の肉体労働問題として表面化してきている。その他の要因は、本田先生のブログに書かれているので、参照されたい。

 これら、複数の要因で病院医療現場が「煮詰まり」、その結果「立ち去り型」「逃散」という現象が起こっているのだと考えている。これを、勤務医は「燃え尽き」と表現している。

 一人の医師ができる「肉体労働」としての仕事能力は微少であるが、「知的労働」としての仕事能力は肉体労働の数十倍はある。一方、社会(患者)の変化に対応して勤務医の仕事の質と量が変わってきているにもかかわらず、経営サイドは合理化に対する認識が遅れている。そのため、肉体労働者としての勤務医に、悲惨な状態が起こっている。

著者プロフィール

飛岡宏(飛岡内科医院副院長)●ひおか ひろし氏。1980年川崎医大卒後、岡山大第2内科入局。岡山労災病院、新居浜十全病院、岡山市立市民病院を経て、90年9月より飛岡内科を継承開業、副院長として現在に至る。

連載の紹介

飛岡宏の「開業医身辺雑記」
「コンピューターと医療の世界を結び付ける」ことをライフワークとする飛岡氏。日々の診療を通じて感じる開業医の喜びや悩み、実感する現代医療の問題点などを、肩の凝らないエッセイ風につづります。

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