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嘔吐下痢症で寝込んで考えたこと

2006/11/28

診察室に取り付けてある「手の殺菌消毒剤」(大型)。SARS が話題になったときから取り付けてあるが、感染症の流行期以外には出番はない。感染予防の基本は「手洗い」と「うがい」である。

 晩秋から初冬のこの時期、外来を受診する患者さんの半数はカゼである。このため、臨床現場には、豊富な感染源があり、医療関係者も感染する機会が多い。感染症患者の多くは、病院よりも、診療所を最初に受診するので、入院するまでもない感染症は、診療所で遭遇することが多い。

 ここ数年、「鳥インフルエンザ」(H5N1)、「SARS」と新興感染症の「パンデミック」(pandemic:重症感染症の世界的・急速な拡大による感染爆発)が取り沙汰されている。この30年ほど、人類は感染症をコントロールできたように勘違いしていたので、今度は感染症の方が人類に対して反撃に出ている……、というのは大げさで、単に、過去から延々と続いている人類とウイルスとの戦いなのである。

 先週の月曜日(11月20日)、急に下痢が始まり、38度の発熱・腹痛・水様下痢で4日間ダウンしていた。これが、ブログへの掲載がしばらくできなかった理由である。私は、特別虚弱な方ではないが、飛岡内科では最初にカゼを引くことが多い。今年のカゼ、一番手は「嘔吐下痢症」であり、猛威をふるうだろうと予想している。原因ウイルスを特定してはいないが、ノロ・ウイルスだと思っている(岡山では、老人施設でのノロ・ウイルス感染症拡大で死者が出ている)。

 飛岡内科には現役で仕事をしている院長がいる。だから、副院長である私はカゼを引いたら、外来は休み、在宅医療(訪問診察という)にも出ない。医者も人間、「病気になったら休むのが当たり前」という理由もあるが、私から患者さんへ病気を広めない配慮でもある。特に在宅医療で診ている患者さんはほとんどが病弱者で、何がしかの感染症を併発すれば、確実に亡くなってしまう人が多い。そんな人がいる所で、感染症に罹患した医療人が訪問診察をすることは殺人に近い行為だと考えている。

 しかし、これが一人で開設している診療所だと、代診をしてくれる医師がいないので「外来を閉めることができるのか?」というと、経済的な理由もあり簡単に閉めるわけにはいかない。2世代で継承開業している最大のメリットは、こんな時に感じるのである。

著者プロフィール

飛岡宏(飛岡内科医院副院長)●ひおか ひろし氏。1980年川崎医大卒後、岡山大第2内科入局。岡山労災病院、新居浜十全病院、岡山市立市民病院を経て、90年9月より飛岡内科を継承開業、副院長として現在に至る。

連載の紹介

飛岡宏の「開業医身辺雑記」
「コンピューターと医療の世界を結び付ける」ことをライフワークとする飛岡氏。日々の診療を通じて感じる開業医の喜びや悩み、実感する現代医療の問題点などを、肩の凝らないエッセイ風につづります。

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