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飛岡的“医師不足”に関する検討(3)

2006/10/26

オランダの花といえば、チューリップ。アムステルダム近郊の「キューケンホフ公園」では、早春になると32haの敷地に700万株のチューリップが咲き乱れる、世界で一番美しい春の庭園といわれる。

 さて、医師不足についての私見の(下)である。

 インターン制度復活は始まったばかりであり、第1期生の彼らの前には、障害となる人材は少ない。若いときに都市部の病院で研修しておけば、人材不足を起こしている地方・僻地へ帰ることはいつでも可能だと考えている。地方・僻地へ帰るときには、それなりの労働賃金が得られるので、今、医師として必要なことは、自分の将来の収入を保障してくれる「キャリア・アップ」だろう。他方、僻地医療には幅広い知識が要求されるので、専門医からすると、リスクの高い、避けたい就職地でもある。

 行政は都道府県・医師会と協力して、僻地医療の立て直しを行おうとしている。この取り組みがマスメディアで流れているが、話を聞いていて分かりにくいと感じるのは私だけであろうか?

 国が強権を発動して、憲法に保障されている「仕事を行う場所についての選択の自由」という権利を医師から剥奪するか、僻地へ従事する医師の賃金を破格に高くする以外に、地方へ医師を流し込む方法はないように思える(現在、日本国憲法では第9条で、戦争の放棄、戦力の不保持、交戦権の否認、が記述されているが、戦時下に医師は国の命令に従って、強制的に従軍する制度になっている)。しかし、すべての僻地に勤務する医師給与を高くすることは現実的ではない。

 結局は、都市部で働くことができる医師数を何らかの方法で抑制することにより、過剰となった医師が地方・僻地へ帰っていく手法を取るのが現実的だろう。(医局制度が崩壊する前と同じ状態)この時代を見越して、都道府県・医師会が主体となって、僻地へ医師を送り込むシステムを作ろうとしているのであれば納得はいく。この場合、今まで医局がしていた作業を「他の誰か」が行うことになるだけのように見える。

 「第11回医師の需給に関する検討会」での話であるが、東北地方の6大学の産科の教授6人が、どのように産科の集約化を図るかというので集まったそうだ。これらの教授は状況が全部分かっているので「ここは集約しなければならい」「集約するには自治体病院だけで集約できる」など、自治体病院だけでは集約できないデータが出てきたそうだ。小児科の問題であれば地域の状況を把握している小児科の教授に集まってもらって流れを決めれば良いことになる。しかし、これだと医局制度の復活を意味しているように見えてくるので、国は納得しないのかもしれない。だが、今の状態(地方の医局に医師が足りない状態)が10年続いたら、医局に医師はいなくなり、医局の発言権は2度と復活しないであろう。そして、現在のミクロの問題解決には10年程度の時間がかかるのかも知れない。

著者プロフィール

飛岡宏(飛岡内科医院副院長)●ひおか ひろし氏。1980年川崎医大卒後、岡山大第2内科入局。岡山労災病院、新居浜十全病院、岡山市立市民病院を経て、90年9月より飛岡内科を継承開業、副院長として現在に至る。

連載の紹介

飛岡宏の「開業医身辺雑記」
「コンピューターと医療の世界を結び付ける」ことをライフワークとする飛岡氏。日々の診療を通じて感じる開業医の喜びや悩み、実感する現代医療の問題点などを、肩の凝らないエッセイ風につづります。

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