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飛岡的“医師不足”に関する検討(2)

2006/10/20

オランダ・アムステルダムの街頭の一こま。街の景観を配慮してか、各種イベントのポスターはこういった広告塔に集中して張られている。

 「医師の需給に関する検討会報告書」(2006.7.28)はお読みいただけただろうか?

 さて、今回は医師不足といわれる医師の需給に関する私見の(上)である。

 ここ数年前までの医師の需給に関する見方は、「医師過剰時代の到来」が主流であり、医師不足は想定されていなかった。今回の検討会でもマクロでみると「医師は過剰となるので医学部の定員を増やす必要はない」と結論付けられている。なぜ医師不足が起こったのか?という理由は「ここ数年のミクロな問題」で起こっていると説明されている。

 別の言い方をすると、厚生労働省が、長年の夢であった医学部の医局制度を崩壊させた結果、医局よりの人的な供給・流通経路が崩壊し、現場にいる、病院の中堅医師が燃え尽き、開業してしまったため、医師不足が起こったと考えられる。

 話は変わるが、地域内で必要な医療の需要(医療費:分子)は変わりないので、分母になる開業医数で割ると、診療所の収入が割り出される。ここ数年、開業医数は増加している。飛岡内科の外来収入は、今年4月の診療報酬改定で、ピーク時の60%に減少している。だから、暇な診療所が、余計に暇になっている。経営者としては非常に困ったことである。だからといって、診療所を他の場所へ移すことも不可能であり、経営の合理化を進め、質素な生活に心掛ける以外に生き延びる方法はない。そして、今後「在宅医療」が経営の基盤になる時代の到来を待ち望んでいる(一部の意見では、在宅医療の拡大は「絵に描いた餅」だそうである)。

 「日本のお金持ち研究」(橘木俊詔・森剛志著:日経新聞社:2005年3月25日初版)では「オーナー企業経営者・医師が高額納税者の2大メジャー職種」だそうだ。この中で、医師にも富裕層「美容外科・白内障専門医・糖尿病専門医、不妊症専門医」と、貧困層「一般外科・内科医」があり、私は貧困層であると実感している(笑)。

 話を戻すが、医師の偏在(都市部に集中し地方・僻地へは行きたがらない)の問題もある。これに、女性医師が増加した結果、出産・育児による現場離脱問題(保育所等で対応する)も重なって、医師不足感が増している。男性医師が僻地に行こうとする時の最大の壁は、妻の反対・子供の教育問題である。介護保険の導入も不確定要素の一つだそうで、様々な要因が複雑に絡んでいる。

 この結果、ミクロ(局地的)な問題として、病院の小児科・産科・麻酔科に勤務する医師不足が表面化している。マスメディアは、この問題を、特別番組を組んだりして、熱烈に報道している。

 産科の場合には、医療裁判の増加で嫌気が増したという要因もあるようで、産婦人科ではなく「産科・婦人科を分けて考える必要がある」ところがミソである。また、医学が進歩するということは、狭い専門領域を担当する専門医が増えることを意味しており、そうなると、医師の需給予測は今後とも論理的に不可能であることが示されていた。

著者プロフィール

飛岡宏(飛岡内科医院副院長)●ひおか ひろし氏。1980年川崎医大卒後、岡山大第2内科入局。岡山労災病院、新居浜十全病院、岡山市立市民病院を経て、90年9月より飛岡内科を継承開業、副院長として現在に至る。

連載の紹介

飛岡宏の「開業医身辺雑記」
「コンピューターと医療の世界を結び付ける」ことをライフワークとする飛岡氏。日々の診療を通じて感じる開業医の喜びや悩み、実感する現代医療の問題点などを、肩の凝らないエッセイ風につづります。

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