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同じ死ぬなら彼岸がよい

2006/09/22

ヒガンバナ(彼岸花)は、ちょうど秋の彼岸のころに咲く鮮やかな赤い花。日本の秋の風物詩である。曼珠沙華(まんじゅしゃげ)という別名がある。これは“天上の花”という意味で、仏教の経典による。

 飛岡内科が診療の対象としている地域は、地方都市の中心部、ドーナツ化現象の空洞部である。超高齢者を高齢者が看るという老老介護の地域である。そんな地域の「かかりつけ医」は、患者や家族と何でも話をする。

 「私が死ぬ時には、蘇生処置はしてくれるな!」「息子には遺産を渡さない!」――。かかりつけ医をしたことがあれば、誰でも一度は聞かされる話である。そんなやり取りの中で、「死ぬんだったら、いつ死んだらいいの?」と、よく患者本人から聞かれることがある。「寿命を全うするまで元気に生きて、死ぬときはコロリと死ぬのがいい。これをPPK(ピン・ピン・コロリ)というんだよ」と教えることにしている。

 もちろん、患者さんもバカではない。年金収入、生活費、家計の収支をシビアに計算している。だが、いざ死ぬことを想像するとなると、限界がある。最近まで元気にしていた友人の急な死、あるいは癌末期でモルヒネのお世話になりながら亡くなった親族の死を見て、死について漠然とした恐怖を感じている。だから「死ぬことは怖くない。でも、死ぬまでに苦しんだり、周りに迷惑をかけることが怖い」と高齢者は言う。「死にそうになったら苦しまないうちに送り出してほしい」のは皆の願いである。例外は、認知症が進行している高齢者で、この人たちには恐いものはない。

著者プロフィール

飛岡宏(飛岡内科医院副院長)●ひおか ひろし氏。1980年川崎医大卒後、岡山大第2内科入局。岡山労災病院、新居浜十全病院、岡山市立市民病院を経て、90年9月より飛岡内科を継承開業、副院長として現在に至る。

連載の紹介

飛岡宏の「開業医身辺雑記」
「コンピューターと医療の世界を結び付ける」ことをライフワークとする飛岡氏。日々の診療を通じて感じる開業医の喜びや悩み、実感する現代医療の問題点などを、肩の凝らないエッセイ風につづります。

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