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混合診療解禁の本質は民間保険の導入

2006/08/02

今回は趣向を変えて、魚の絵を紹介しよう。これは「あかむつ」。口の中が黒いところから「のどぐろ」と呼ばれている。夏が旬で、とてもおいしい魚である。

 日本で最初の健康保険制度は、1922年に制定、1927年に施行された。1961年には国民健康保険制度の整備により国民皆保険が達成された。これ以降の医療は保険診療(国家統制された医療)が主体で、自費診療(自由診療)は限りなくゼロに近づいた。この理由は「混合診療の禁止」(同日の医療行為の中で保険診療と自費診療が混在することは認められない)という事項があるためである。つまり、保険診療にわずかな額の自由診療を併用しただけで、すべての医療行為が自費診療の扱いとなり、患者の負担となるため、実質的には自費診療はできないという仕組みである。

 ここ数年、政府(経済財政諮問会議)は「混合診療解禁」を行おうとしている。経済財政諮問会議の視点では「医療は今後20年間で最も成長する産業である」と見ているからだ。このため小泉政権下において社会混乱を起こす程の医療改革を断行してきた。これが歴史的にみて正しいことであったか?は、これから検証していく必要がある。

 日本医師会は、次の理由によって混合診療解禁に反対している。
・所得により受けられる医療の内容に格差が生じる。
・根拠や効果に乏しい保険外治療により患者に悪影響を及ぼしかねない。
・保険外の検査や投薬を受けられるのは、極少数の人間だけである。
・患者の立場から、どの治療法が有効か判断するのは困難であり、本当に有効な治療法なのであれば、早期に保険で認めればよい。

 一方、混合診療解禁に積極的な政府側の意見は、こうだ。
・現行の制度では、混合診療をすると医療費の全額が患者の負担となるが、解禁すれば、保険診療部分が保険給付の対象となり患者負担の費用が減少する。
・癌などで、保険適用外の有望な治療法があっても、保険適用までの時間を待てない。
 (2002年6月、肺癌治療薬「イレッサ」の使用が承認されましたが、その後、様々な副作用・死亡問題が起こりました。現在「イレッサ」は保険適応されています)

 議論は平行線をたどっている。もちろん、これは表面上の議論でしかない。本質は「公的医療保険」制度に「私的医療保険」を導入するかどうかである。

 公的医療保険制度は、現在、私たちが受けている医療を支える制度である。この制度は20年以上前から「数年後には医療保険制度が破綻する」との理由で、様々な変遷(医療費抑制)を経てきたが、今のところ破綻していない。この背景には保険者側・医療側による壮絶な駆け引きがあり、両者の妥協の上で医療保険制度が維持されていた。この駆け引きの場所が「中央社会保険医療協議会」(中医協)であり、医療費の総枠、医療制度全般についての方向付けが行われていた。

著者プロフィール

飛岡宏(飛岡内科医院副院長)●ひおか ひろし氏。1980年川崎医大卒後、岡山大第2内科入局。岡山労災病院、新居浜十全病院、岡山市立市民病院を経て、90年9月より飛岡内科を継承開業、副院長として現在に至る。

連載の紹介

飛岡宏の「開業医身辺雑記」
「コンピューターと医療の世界を結び付ける」ことをライフワークとする飛岡氏。日々の診療を通じて感じる開業医の喜びや悩み、実感する現代医療の問題点などを、肩の凝らないエッセイ風につづります。

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