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診診連携は医者の人生を豊かにする

2006/07/18

倉敷アイビースクエアの池に咲いた睡蓮。大原美術館にはフランスの画家、クロード・モネの睡蓮の絵がある。モネは親日家で、自宅の日本庭園に睡蓮を植えて絵を書いたとか。その庭園から株分けされた一つがこの睡蓮。

 平成18年4月、厚生労働省は「在宅療養支援診療所」という制度を、地域医療機能分担を具体化する基軸として新設し、病診連携を促進した。そしてここ数カ月の間に、「持続可能な社会保障制度」という名目で、医療・介護に関する法律が作られ、医療・介護の供給体制が大きく変わることが見え出した。現場の意見を無視したこの「社会保障制度改革」によって、医療型療養病床が消滅し、介護保険が医療に優先され、大半の慢性期の患者は在宅で過ごすことを余儀なくされている。多くの医療難民・介護難民が出るともいわれている。本当にそうなるのか?別の解決策が示されるのか?誰も知らされていない。

 この社会保障制度の再構築により、多くの医療機能が失われるであろうが、一方で新しい医療機能が作り出される必要があり、どのような方向に進むのか注目したい。とはいえ、いくら楽天的な性格の私でも、今の時代の動きを見ていると気分が暗くなり「うつ病」になってしまいそうだ。物事を少しでも明るく考えなくてはいけないと言い聞かせている。

 さて、これは私の持論であるが、外来患者は1日の外来医療費でみて、大きく3種類に大別できる。
  1)1000円の患者
  2)1万円の患者
  3)10万円の患者
である。1000円の患者は投薬ダケの患者であり、1万円の患者は定期的な血液検査等を受ける患者である。10万円の患者は高額医療機器を使って診断したり、急性期疾患にかかり生命の危機を考える必要のある患者である。

 これからの医療機能分担では、1000円と1万円の患者を診療所が診て、1万円と10万円の患者を急性期病院が診ることになる。この結果、急性期病院では、外来患者が減り「3時間待ちの3分診療」が解消されるとともに、患者単価が上がるので、外来収入は増えることになる。極端な表現ではあるが、1000円の患者を10人診るよりも、1万円の患者を2人診た方が、収入は2倍になるということである。このような恩恵を受けられる急性期病院は一部であろうが、上手に体質改善ができた病院は生存競争に勝てるのである。

 他方、診療所はマンパワー・設備投資を最低限に抑制しているので、医療機関を維持するためのランニングコストは低い。このため1000円の患者を主体に診ることが可能になる。しかし、これは複数の診療科・急性期病院が混在する都市部にある診療所でのみ可能な話で、僻地になると話は一変する。診療所に要求される機能が多岐にわたり、それに応えるために設備投資が増え、マンパワーも必要となってくる。そして診療所で診られなくなった患者は中核病院(急性期病院)で診療を受けることになるが、長期間は診てもらえない。この辺りの病診連携がより重要になってくる。

著者プロフィール

飛岡宏(飛岡内科医院副院長)●ひおか ひろし氏。1980年川崎医大卒後、岡山大第2内科入局。岡山労災病院、新居浜十全病院、岡山市立市民病院を経て、90年9月より飛岡内科を継承開業、副院長として現在に至る。

連載の紹介

飛岡宏の「開業医身辺雑記」
「コンピューターと医療の世界を結び付ける」ことをライフワークとする飛岡氏。日々の診療を通じて感じる開業医の喜びや悩み、実感する現代医療の問題点などを、肩の凝らないエッセイ風につづります。

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