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末期医療の選択肢は広がったのか?

2006/07/06

初夏から秋にかけて咲くアザミ。日本の山野に自生し、80~90種あるという。この写真は、3枚の組み写真の1枚。残り2枚は下の方に掲載した。飛岡内科院長・飛岡隆の作品である。

 今回は、少しお医者さんらしい話をしよう。この7月1日に、特定施設の入居者が悪性腫瘍以外の患者でも、在宅介護支援診療所の医師が、訪問診療で在宅時医学総合管理料を算定できるようになった。これによって、私が、今診ている患者さんの選択肢が広がるのかどうか、問題提起をしたい。

 患者さんは、80歳男性(飛岡内科近くに在住)。 基礎疾患はCOPD、年に数回喘息発作あり。少量のキサンチン系気管支拡張剤を服薬している。

 5年前に妻に先立たれ、本人所有の5階建てビル(エレベーターなし)の最上階で生活。長男(55歳、無職)と同居し、長女(53歳)は米国在住。親戚は岡山県内にはいない。介護保険の利用を勧めるも、他人を家の中に入れたがらず、買い物は長男が行く、との理由で拒否。

 2004年8月、老人健診にて肺癌を発見。病院での気管支鏡検査で、リンパ節への転移はないことを確認。治療方針については、患者本人が、必要最低限の抗癌剤を使うだけにして、自然経過観察を希望する。同年9月には、娘にお別れしてくると渡米している。

 2005年11月、腰痛を訴え、胸椎12番の圧迫骨折があり、肺癌の転移と考えられた。痛みは非ステロイド抗炎症薬(NSAID)にてコントロールできる範囲である。

 2006年5月15日、左下肢痛を訴え、動けないため、長男が車椅子に乗せて受診。骨盤X線写真(P→A)では大腿骨への転移はないが、腰椎全体の変形が著明で、腰椎より出ている神経を圧迫して起こる「神経根痛」と考えられ、実際、仰臥位に寝かせると痛みが消失した。このときの理学的所見では、両鼠径部リンパ節に転移を認め、両下肢の浮腫を認めた。胸部X線写真で、両肺野への転移も確認しており、血中酸素飽和度85%で、軽い呼吸困難を示していた。

著者プロフィール

飛岡宏(飛岡内科医院副院長)●ひおか ひろし氏。1980年川崎医大卒後、岡山大第2内科入局。岡山労災病院、新居浜十全病院、岡山市立市民病院を経て、90年9月より飛岡内科を継承開業、副院長として現在に至る。

連載の紹介

飛岡宏の「開業医身辺雑記」
「コンピューターと医療の世界を結び付ける」ことをライフワークとする飛岡氏。日々の診療を通じて感じる開業医の喜びや悩み、実感する現代医療の問題点などを、肩の凝らないエッセイ風につづります。

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